ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

闇ニ舞ウ記憶ノ欠片 ( No.2 )
日時: 2009/12/01 22:09
名前: 黒翼 ◆ERZNJWqIeE (ID: 82QqnAtN)
参照: http://all-star5-knksk.cocolog-nifty.com/blog/

  1冊目【狂気ノ歌】 1ページ目

——記念すべき第1冊目は、『雄治』っていう少年の話みたいだよ。
     ……わぁ、学校って、こんなに怖かったっけ……?——





「おはよう、アキ」

 俺はいつもどおり、朝『晶』——通称アキと登校するために会いに行った。
 でも、そこにアキはいなかった。否——変わり果てたアキの姿があった。
 爛れた皮膚、腐れ落ちた目玉。

「あッ……アキ……!」

 情けない。
 俺はアキの姿を見て後ずさりしてしまった。

「ゆ……」
「え……?」
「ゆ……じ……」

 アキは苦しそうに俺の名を呼んだ。
 けど、表情には笑顔を浮かべていた。仲間を求める生ける死体——
 ゾンビとなって。
 俺は震えて動かない足を自分で殴りつける。
 アキが迫ってくる。餌食にされて終わり、なんて——絶対嫌だ!
 たとえアキが相手だろうと、犠牲者だろうと——

『ごめんね、アキ』

 俺は心からそう言った。

「おぁああああぁぁぁああぁッ!」

 俺は自分のチャリを全速力でこいだ。
 学校なら、なんとかなるかも知れない——そう信じて、学校まで
 迫ってくるアキを振り切っていく。

『悪い夢だ』

 そうだ。
 きっと悪い夢なんだ。
 学校へ行ったら、きっと休み時間保健室にいる俺がいて、みんながいて——
 そうに決まっている。こんな親友が酷い目に遭うような悪夢、もう御免だ。
 後ろを振り返ると、アキはまだ追ってきていた。
 よりおぞましさを増し、狂おしさまで伝わってくる。
 もう、アキじゃないような感じがした。
 この位置からは学校が見える。死に物狂いで激チャリだったから、
 10分掛かるところを5分でつけたらしい。
 時計は8時10分を指していた。
 職員玄関前にチャリを置き捨て、土足で校内へと駆ける。

「はぁっ……はぁっ……」

 上がった息を整える暇もなく、手当たり次第に人を探した。
 ホールの中心から、上、横、後ろ——最初に見つけたのは、木川だった。
 安心感を隠せず、だが緊張感も隠せなかった。
 助かった——そう思いたかったのに。

「おいっ! 木川——」

 俺の願いは、儚く散った。


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