ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第ⅩⅠ話 湖——シェイラ ( No.11 )
日時: 2009/12/05 17:30
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

「俺はグレイシャ特別機動隊隊長、ライツ=フローライト」

 グレイシャ風の丘のふもとにある巨大な湖【シェイラ】
 グレイシャでの戦いは、ここで繰り広げられる。
 ライツは、こちらへ向かってきたラファーロ軍に声を張り上げた。

 どちらの軍も突然襲いかかったりはしない。それが戦いの中での礼儀だ。
 隊の将同士がしっかりと名乗ってから戦いを始める。この星の戦いの決まりのようなものだ。

 「こんにちは。ライツ=フローライト」

 応えたのは、短い金髪の少女だった。右手には包帯、肩には自分の身長ほどある蒼い剣を担いでいる。
 そして、薄い緑の瞳をきらきらと輝かせ、笑う。戦場には似合わない顔だ。

 「わたしの名前はルエ・アマリア・リテ」

 にこにこと笑うルエを見て、ライツは思い切り睨みつけた。ルエは少し首をすくめるが笑顔は絶やさない。
 
 「毒舌で有名なライツ=フローライト……ね」

 ルエの隣にたっていたもう一人の少女が口を開いた。
 その髪はルエと同じく金色で、二つにきっちり結わかれている。
 右目には光を通すことのない眼帯。左は、漆黒の聡明そうな目をしていた。

 「私の名は、闇蝶アミ。私は、平和にも戦争にも興味はない。
  仲間や友達もいらない。自分が生きていればそれでいい」

 アミは無表情で淡々と言うと、口を閉ざした。

 (闇蝶、アミ。[黒蝶]という異名を持つ……か)

 噂にはきいていたが、それ以上のクールっぷり。毒舌で有名なライツもそれに劣らないが……。
 ルエもアミも名が知れているだけの力はあるだろう。
 
 「さぁ、おもしろくなりそうだぜ」

 ライツはほんの少し口の端をあげ、不敵な笑みをつくった。