ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第13話 氷の剣 ( No.16 )
日時: 2009/12/13 22:57
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

 「はぁ……はぁ……」

 誰かの荒い息が聞こえる。ハーディは恐る恐る目を開けた。
 そこには、槍を手に呆然としているキラがいた。
 自分は、透明な水でできた球体のような物に包まれ、宙に浮いていた。
 周りを見回すと、マリンがこちらに手をのばし、息をはずませていた。

 「何をしているんですか!!」

 マリンはハーディに向けて叫んだ。ゆっくりと体が地面におろされてゆく。
 (そうか……。これはマリンの“水球デゥ”……)
 “水球”(デゥ)はマリンが防御術の中ではもっとも得意とする魔法だ。
 水を幾重にも重ねて球を作り、そこに魔力を注ぎこんであらゆる攻撃から身を守るのだ。

 「ふ〜ん。さっすがお姫様。やっるね〜」

 キラは子供のように笑って感心したように言った。
 マリンはケンの攻撃ほ必死によけていた。
 先程の感電で体力は落ちたが、それほどではない。
 実際、ハーディの方に目を向けられるほどの力はまだまだある。
 
 「あぁ。今度は油断しないぜ」

 水の球がはじけ、キラキラとはじける水滴の中で、ハーディはかっこつけてそう言った。
 マリンはやれやれと言うように首をふった。
 ハーディは大剣“グレイシャル”を構えた。

 「次はこっちから、いかせてもらうぜ」

 グレイシャルが確かな輝きを放ち始めた。
 ぴきぴきと言う音がして、剣が氷を纏ってゆく。
 ハーディは目指すべき標的へと疾走した。
 キラは余裕な顔で一歩もその場を動かない。
 ハーディはキラに届く……一歩手前で大きく跳躍した。

 「上からね〜」

 キラは上を見上げ、迫りくる敵を見た。  そしてハーディがグレイシャルを振り下ろそうとした時……

 「なにっ……!?」

 ケンと同様、突如姿を消した。ハーディは辺りを見回し警戒する。
 精神を集中させ、瞳を閉じる。
 ハーディの周りだけ、時間が止まったかのような感覚に陥る。
 刹那、僅かに風が動いた。ハーディは瞳をぱっと開き、
 気配を感じた場所に氷の剣を振り下ろした。
 
 「…………ふぅ。あー怖い怖い」

 キラは攻撃を間一髪でよけたようだが服の端が一線、切られていた。

 「うん。まぁまぁ悪くないんじゃない?」
 
 キラはそう言って、笑った。すると、ハーディはにやりと笑った。

 「まだだ……」

 気がつくと切られた線の周りが凍結している。キラは少し驚いて目を見開いた。

 「へぇ〜。その剣、切った所から凍っていくのか……。
  ちょっと、厄介だなぁ……」

 キラは困ったように笑うと、切られた服の部分を勢い良く剥ぎ取った。