ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第Ⅲ話 幼馴染 ( No.3 )
日時: 2009/12/05 17:26
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

リーアス国の城下町にも、既にラファーロ軍は近づいていた。マリンは国の人々に避難を促した。
 城の前の広場には結界がはられているのだ。
 そして、マリン達第一部隊は町で戦うことがないよう、
 国の北側にある[沈黙の野原]へと騎馬を進める。

 「おい、マリン。大丈夫か?」

 一人の青年が話しかけた。彼の名前はハーディ=フロスト。
 白藍の髪と暖かみのある紺色の瞳を持つ。
 ハーディはマリンの幼なじみで、その父はカイスと共に[奇跡の水]の研究を行っていた人物である。
 ハーディは、ガイア以外で唯一マリンを名前で呼ぶ男だ。

 「……どうして?」
 「いや、何か不安そうな顔してるって言うか……」

 マリンははっとした。自分では表情をかくしていたつもりだったからである。

 「お前の親父、ラファーロに殺されただろ?
  それと何か関係があるんじゃないかって思ってさ……」

 ハーディの言葉は的を射ていた。

 マリンは祖父の言葉を聞き、恐れていたのだ。
 自分の中に眠っている力————
 それがどれくらいの物かは分からないが、おさえられる自信がなかった。
 それ程に、ラファーロを憎んでいたのだ。
 
 しかしマリンはそれを誰かに言ったりはしない。
 それは弱みを見せる事になる。姫としての威厳を失うことにも通じる。

 二人は共に口を閉ざした。荒々しく地を蹴る蹄の音が、やけに大きく聞こえる。

 ハーディはいつも、マリンの心を読んでいるかの様だった。
 どんなに明るく振る舞ったり笑ったりしても、マリンの気持ちをしっかりと見抜いていた。
 マリンはそんなハーディに悔しくも思ったが、嬉しいような気もしていた。

 「大丈夫です!!私は」

 沈黙を破ったのはマリンの方だった。
 胸にはまだ大きな不安を抱えていたが、くよくよしていても仕方がないと吹っ切れた。

 「何かあったら言えよ」
 「………はい」

 そういってマリンは少しぎこちなく笑った。
 久しぶりに見たマリンの笑顔にハーディの頬も少し緩んだ。

 「急ぎましょう!!」

 マリンはそう言うと、更にスピードをあげた。




    沈黙の野原、戦場へ向かって————