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第Ⅳ話 謎の美少女 ( No.4 )
日時: 2009/12/05 17:27
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

 「エルドラド」レイク大陸の中で最も小さな国。
 絵本から抜け出してきたような風景と、様々な工芸品で有名だ。
 その美しい街も今、戦火にさらされていた。かつては民の憩いの場所であったこの広場も。

 「ふふふ………
     は、ははははは!!良い眺めだ!!」

 燃え盛る炎を見つめて笑う一人の男がいた。
 ラファーロ軍第三部隊の隊長、ブルート=ファイアリーである。短くきった燃えるような赤毛。
 明るい朱色の瞳には、色の印象とは異なる冷たい光がやどされていた。
 ラファーロ軍の大半は魔術属性関係なしに炎の魔術を使うことができる。
 もちろん、ブルートもそうだった。
 
 「奇跡の水を大人しく渡さないからさ!!ははははは!!」

 笑うブルートの前に、突然白銀の何かがさっと通り過ぎた。

 「…………!?」
 「はずしたわね、残念。もうちょっとだったんだけど……。ねぇコルア」

 声のした方に目をやると、そこには一人の少女がいた。
 腰あたりまでのびた銀色の髪と、薔薇色の瞳が目立つ。
 そして胸に抱いているのは……
 白銀に光る—————狐?

 「………お前、誰だ」

 ブルートは突然現れた少女を睨み、先程とは全く違う静かな声でいった。

 「あら、怖い顔。人のことを聞くのなら、
   まず自分から名乗るのがどうりではなくて?」

 少女は狐を撫で、怪しい笑みを見せながら言った。そしてブルートは名乗った。

 「我が名はブルート=ファイアリー。ラファーロ第三部隊の隊長だ」
 「第三部隊?フフ。弱いのねぇ」
 「なんだとっ!?」

 怒りに顔を歪めるブルートといたって涼しい顔の少女。

 「俺が名乗ったんだからお前も名乗れ!!」
 「私?私はフィリア。フィリア=ライトネス」
 「………何者だ。」
 「ただの通りすがり。と考えてくださればそれでいいわ。」
 
 相変わらずの笑みに、ブルートはふつふつと湧いてくる怒りをおさえるのに苦難していた。

 「で、抱いてるそれは何だ?」

 ブルートがそう言った瞬間、フィリアの顔から表情が消えた。

 「ねぇ………今、 [それ] って言った?」

 一瞬で空気が凍り付いたような気がした。凄まじい冷気がフィリアの体から発されている。

 「それ、ってコルアのこと?」

 無表情な顔を見て、ブルートの心までもが恐怖で凍りついた。遂にそれを顔にだしてしまった。

 「あ……。ち、違います……」

 一軍の隊長とは思えないような弱々しい声。これでは面目まるつぶれだ。

 「そ、ならいいの。この子はコルア」

  フイリアは再び笑みを浮かべた。

 「さあ、始めましょうか。報いを受けていただかなければなりませんから」

 少女は戦いの始まりを告げた。

 小さきエルドラドの………

             大きな戦い—————