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第Ⅴ話 風の丘 ( No.5 )
日時: 2009/12/05 17:28
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

ここはリーアス国の真南に位置する街、グレイシャ。
 川と湖が多く、リーアス国の中では一番自然が豊かな国といえるだろう。

 その国の中心には不思議な丘がある。
 雨の日も雪の日も、その上だけは心地よい暖かな風がふくのだ。
 そんな丘のてっぺんに、一人たたずむ者がいた。

 後ろで三つ編みにした白銀の髪に、透き通るような空色の瞳。何よりも目をひくのは、左目を覆い隠す眼帯。

 少年とも少女ともとれるその風貌だが、今は少年といっておこう。

 「良い天気……だね」

 瞳を閉じ、気持ち良さそうに言う。
 しかしその頬には少し寂しそうな微笑が浮かんでいた。
 少年の側には誰もいない。それなのに誰かに語りかけるような話し方をする。

 「戦いが……始まるよ」

 少年がそう呟いた時、一人の兵士がどこからともなく現れた。
 
 「将軍……じゃなくてアイス=フローライト様。
  西の方角から敵が攻めてまいります!!」

 兵士は早口でそう告げた。

 「うん……ありがとう。僕も行くよ」

 焦りの表情を浮かべる兵士とは裏腹に、いたって静かな声でいった。

 「あの……【将軍】は……?」
 「ライツ、寝起きだから機嫌悪いみたい。
  起こさない方が良いと思うんだけど……起こす?」
  「い、いえいえ!!けっ結構です、はい。では、参りましょう。」

 アイスは兵士に続き、二人で丘を降りる。
 ……いや、三人というべきか。
 と、まぁこの言葉の意味はすぐに分かることだろう。

 「アイス様ラファーロ軍がもうすぐそこまできております!!」

 丘の下で待機していた別の兵士が言った。

 「……あと、ここまでどのくらいかかるかな」
 「それほどはかからないかと」
 「そっか……」

 アイスは考えるような表情をしてうつむいた。そして顔をあげると静かに言った。

 「ライツ起こすね。僕、戦うの苦手だから。」
 「は、はい……。」

 兵士は少し怯えたような表情をしたが覚悟を決めたように答えた。