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第Ⅷ話 魔法陣…発動 ( No.8 )
日時: 2009/12/05 17:29
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

薄い笑みを浮かべるフィリアを見て、ブルートは凍りついていた。
 いや、“心が”凍りついていた。しかし、ブルートも一隊の隊長。
 覚悟を決め、武器である大剣の“ブレイズ”を構える。

 するとフィリアはすっとその瞳を閉じた。

 「汝、契約せし者なり————
   今、我に力を与えたまえ————」

 最小限の大きさに口を開き、言葉を紡ぎだす。ブルートは不覚にも、それに見入っていた。
 突如、フィリアの足元に半径2m程の魔法陣が現れたのだ。まばゆい白銀の魔法陣が……。
 風が髪を吹き上げ、フィリアは白銀の光に包まれる。

 「風よ————
  我、命ずるままに————吹き荒れろ!!」

 ぱっと瞳を開き、フィリアが叫んだ。すると突然、突風がブルートを襲い体制をくずさせた。
 風にたえながらもじりじりと後ろに飛ばされていく。

 「……うぉ!?」

 気付くと、ブルートの後ろには白銀の固まりがあった。
 その固まりが思い切りぶつかってくる。そして————

 「…………!?」

 ブルートの思考が一旦停止した。自分の状況が上手く把握できなかった。
 何故なら、自分が先程立っていた所から30m程後方に横たわっていたから。
 体中が痛む。もしかすると、骨が折れているかもしれない。
 横たわった自分のすぐ前にはフィリアがいた。

 「良くやったわねコルア、お手柄よ」

 フィリアは再び胸にコルアを抱き、愛おしそうにその背を撫でた。

 「弱すぎてつまらないわね。でも、もう終わりにしなければ……」

 「なん……だと……」

 ブルートが苦しそうに顔を歪ませて声を絞りだすと、フィリアは平然とこたえた。

 「あら、まだ喋れるのですか?私は終わりにしようと言ったのですが」

 フィリアは冷たい笑みを見せ、右手を前に突き出した。

 「でゎ、ごきげんよう」

 「……っ!!」

 ブルートは必死に逃げようとしたが、凄まじい痛みに体が動かない。
 フィリアの指先が内側から輝きはじめ、ブルートの心臓にそれが打ち込まれようとした……。
 その時————

 「……何!?」

 辺りに弦楽器の高い音が響いた。激しい曲調だ。
 フィリアは苦しそうに眉間にしわをよせ、耳を塞いだ。
 同じ音を聞いたブルートも耳を塞ぐ。そして大声をあげた。

 「おいリーチェ。俺のことも考えろよ!!」

 崩れおちた家の影からその人物は現れた。