ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第Ⅸ話 美しき魔女 ( No.9 )
日時: 2009/12/05 17:30
名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)

現れたのは一人の女。[リーチェ=ダークドール]

 踵まで伸びた金髪のツインテール。
 右の瞳は吸い込まれそうに深い海色で、 左目は蝶をかたどった眼帯に隠されていた。
 眼帯に隠されていても、その顔は整っていて相当の美人だということがわかる。
 そして左腕には、先程の音の原因と思われる楽器、ヴァイオリンが抱かれている。

 「さっさと逃げぬ方が悪い」

 リーチェはブルートに向かって冷たく言い放った。

 「あんな状況じゃ逃げられるわけ……」

 ブルートは決まり悪そうにくちごもった。言っていることが正しい上に、危ない所を助けてもらったのだから。

 しばらく呆然としていたフィリアは、そんなやりとりをする二人を見てまた笑った。

 「あらあら、もう一人参戦ですか?これは、倒しがいがありそうですわね。
  私はフィリア。この子はコルア。あなたは?」

 フィリアはリーチェに問いかけた。

 「ふん。妾の名はリーチェ。リーチェ=ダークドール。
  妾の名も知らないとは、どうやら民間人のようだ」

 リーチェの人を小馬鹿にするような喋り方にもフィリアの笑みは崩れない。

 「リーチェ……。聞いたことないですわね。あまり知られてないのでは?ふふ」

 喋り方ならフィリアも負けてはいない。そしてリーチェもその言葉に惑わされたりはしない。
 二人の間には冷たい空気が流れ、ブルートはひやひやしながらそれを見ていた。
 リーチェは相当の魔力の持ち主だが、フィリアのそれも予期はできない。

 「では再び開戦、としましょうか」

 フィリアが言うとリーチェは無表情で口を閉ざし、ブルートは叫んだ。

 「ちょ、ちょっと待てよ!俺、怪我してんだけど」

 「知らぬ」

 リーチェは一言冷たく返し、ブルートはやれやれと首をふった。

 「じゃあここ任せるから。よろしく」

 そう言うと、突然その姿が消えた。どこかへテレポートしたのだろう。

 「邪魔者は消えたぞ」

 リーチェはフィリアに向かって言い放ち、ヴァイオリンを構えた。
 フィリアは魔法陣を展開させ、コルアを放す。

 「もう少し……でしたのに。
  あなたで、この気持ち……晴らさせていただいてもよろしいかしら?」

 そしてフイリアは、呪文を唱えるべくその瞳を閉ざした。