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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 1. ( No.4 )
- 日時: 2009/12/09 16:31
- 名前: 六 ◆BbBCzwKYiA (ID: IJ2q7Vk/)
そのひとは、黒かった。
白い部屋に、黒いそれ。
それは、清潔な背景にひどく不釣合いな闇の色で。
今私の目の前にいるものは、どこからどう見ても闇色の羽根を持ったおそらく天使と呼ばれるものだった。
1.
彼の事を語るには、まず私の事から話さなければならない。
母さんが私を産み落とした時、生まれた村の神官とか言うどこかの誰かから、「神の子」と言う名の生贄の役割を押し付けられた。
それは、生まれた場所で死を迎えられない、という意味であり、親と共に生きる事が出来ない、という意味も含んでいた。
要するにそれは、私の人生をまだ何も考えられない時から根拠の無い「神のお告げ」とやらで決められたという事なのである。
15歳になったその日、私は今まで着た事も無いような真っ白で綺麗な服を渡され、それを着てすぐに生贄が連れて行かれる真っ白な城————通称「空白ノ城」へと国の兵士に連れて来られた。
そして彼らは、私をどこかも分からない真っ白な部屋に入れて、そのまま置き去りにしていった。
———成る程、生贄と言うのはこういう事か
小さな何も無い部屋で、飢えて餓死していく。
しかし、それが神様と呼ばれている物、もしくは生贄を捧げなければならない程人々が恐れている物にとって何か特があるのか?
そんな事を考えている内に、いつの間にか瞼が重くなり、私は眠りについていた。
……そして、話の冒頭に至る。
黒い翼を羽ばたかせ、こちらをまるで珍しい物でも見るかのような目で見つめる彼は、しばしの沈黙の後、まだ少し見下すような目で口を開いた。
「……ハジメマシテ。俺は「冥界天使」。お前はこの部屋で逝く最後の人間だ」
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