ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 5. ( No.12 )
- 日時: 2009/12/24 17:28
- 名前: 六 ◆BbBCzwKYiA (ID: IJ2q7Vk/)
日の光が部屋を照らす。
……どうやら、いつの間にか私は眠っていたらしい。
まだ少し重い体を起こし、その場に座ってまだ残る眠気を払う。
どうやら、彼の黒い天使はまだここには来ていないらしい。
暫く外を見つめていると、不意に、一つの歌が頭の中を閃いた。考える間もなく、口から最初の音が出る。
題名も知らないその歌を、何時の間にか私は歌っていた。
何故か、聞いたことも無い筈のその歌が懐かしく思えた。
そして、それを歌い終われば全てが消えてしまう……そんな、根拠も無い思いを歌っている内に感じていた。
——全てを写す 鏡の中
——知らない私は、何処へ行く——
最後の一言を終えた時、この部屋の中だけ、時が止まったような感覚がした。
そして、小さな部屋に一つ、拍手の音が響いた。
「上手い上手い。久しぶりに見たよ。ここでその唄を歌ってる奴なんて」
振り返れば、闇色の羽根が見えた。
黒い翼を羽ばたかせながらこちらを見て拍手をする彼の目からは、もう最初に会った時の見下すような色は消えていた。
「久しぶり、に………?」
無意識に、その一言に反応していた。
「ああ、お前がここに来るずっと前……「最初」の生贄が、その唄を歌ってたんだよ。」
「……成る程」
短く返事を返した。
………最初の生贄………
いつかに聞いた神官の話では、生贄というのはずっと昔から、その資格が受け継がれている、という事だった。
血の繋がらない先祖のようなものでしょうね、とまだ若い神官は言っていた。
あいつの言葉を借りるのは何故か嫌だったが、確かに「血の繋がらない先祖」なのだろう。
何より、私が知るはずのない唄を彼は最初の生贄が歌っていた、というのだから。
だから、懐かしく感じたのだろう。
勝手に納得して、いつの間にか窓の外を見ている彼に問う。
「その人は………「最初」の生贄は、どんな人だったの?」
「ああ、お前にそっくりだったよ。顔も、声も、その性格も」
無表情でそう言う彼に、少しだけ哀愁のようなものを感じたのは、気のせいだったのだろうか。
そして、そんな事を思う自分への嘲笑を含んで、小さく笑った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こういう終わり方が多い気がする。(二回目だけど