ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 6. ( No.19 )
- 日時: 2009/12/24 17:30
- 名前: 六 ◆BbBCzwKYiA (ID: IJ2q7Vk/)
「………私は、私だ」
ひとつ呟くと、それを聞いたらしい目の前の天使はまるで問題の答えを聞いたらさらに分からない言葉が出てきた時……つまりは全く分からない。そういう顔で言った。
「………それがどうした?」
「……ちょっと、思っただけ」
「………へー」
会話はそれで途切れたが、彼は私の事を少し探るような目で見た。あまり不快にならない程度の。
仕方ない。私は自分でも何であんな言葉が出たのか分からないのだ。
もしかしたら。
推測でものを言うのはあまり好きではなかったが、
………そうなのかも、しれない
頭に閃いた一つの考えを、何故振り払わなかったのかは私は知らない。
人間が、最も恐れる、もしくは悲しむ答えの筈なのに、恐怖どころか私はその答えに安心したような感覚を覚えた。
勿論、それは自分が人殺しをした、罪を犯したというものでは無く、
全てが偽りの世界、というような夢物語でも無かった。少なくとも世界は確かにここにあるはずだ。私の認識内では。
………私自身が、もうここにはいないのではないか。
生贄の少女が見つけ出した仮説は、今までなら絶対に否定するような考えだった。
否定、それはひとつのモノを退ける事。嫌う事。
死。それはひとつのモノがもうここには無い。という確信。
そう、生贄は考えていた。だが、それでも、
死者には、自分にとって後に遺したいモノが存在するようになる事も、知っていた。
……ならば、
遺したいモノ、遺せるモノが何もない自分は、異端なのか?
死とかそういうもの以前に、自分はここには存在していないモノであり、ここに存在してはいけないモノなのだ。自分の仮説が正しいならば。
………それなら、どうすればいい?
どうすれば、私自身がここにあった確信を残せる?
白い部屋は、何も教えてくれない。
いないはずの神様も、何も教えてはくれなかった。
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久々の更新。