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Re: >>> ア   ク   セ   ス > >  ( No.38 )
日時: 2009/12/19 16:05
名前: RADELLE03 ◆X6s/dtSC5A (ID: QYM4d7FG)

  一体あと、何人生きているんだろう……

ふと見たテレビ画面には、天気予報が放送されていた。
気がつけば、季節は一年で最後の十二月になっていたのだった。

  そういえば……

ついさっきまでいた祐樹の姿が見当たらなかった。
  おかしいな…確かここにいたのに———

 「 舞—— ? 舞、ちょっとしっかりして」
 「 あ、ごめん——考え事してて……」

心配そうにダルシーは舞を見ると、孝助に尋ねた。

 「 ちょっと孝助、香奈は ?」
 「 え ? 香奈 ? ……僕は知らないよ——」
 「 無責任な奴———」
 「 えぇっ ! ? 何——」
深くため息をついたダルシーは救いを求めるようにケンを見た。

 「 はぁっ ! ? 冗談じゃない ! 今外に出たら俺だって捕まっちまう」
 「 だよねー。……ここは、香奈がなんとか此処に辿り着くのを祈るしか——」

ダルシーはゆっくりと立ち上がり、薄い白地のカーテン越しに外を見た。
舞も隣で見ると、何やら地上で小さく動いているものが見える。
  あれが……警察かもしれないとすると、この状況で此処に来るには——。

  不可能に近いこと。

沙紀も表情を暗くしているが、孝助はどうにかならないかと考えている。
誰もが頭を抱える中、徐々に外が暗くなってきた。

 「 どうしよう、どうしよう———」
 「 あの香奈が一日中逃げ回れる訳が無い。……どうするんだよ」
ケンも危機感を抱いているらしい。
そもそも、孝助の後に続いて警察も此処までやって来てしまったのだ。
これ以上無駄に動くことは、誰もが極力避けたかったことだ。

しかし、時間だけが過ぎるばかりだ。

 

 「 じゃ、行ってくる」
 『 え———』


誰もが絶句した。
突然姿を現した祐樹は、玄関へと向かう。

 「 ちょっと待て、何しに行く ? !」
 「 何って……囮になるんだよ」

誰もが彼の言葉に耳を疑った。
ダルシーは祐樹の着ている服の袖をつかんだ状態でいる。

  囮って———。

  考えられない、だって参加者も違反者も顔が知られているんだし———。



舞はそのとき、はっとあることを思い出した。



  祐樹は参加者じゃないんだった…………

  つまり、警察側も誰も彼がゲームに関係しているとは知らない

  分からないし、怪しまれることも無いはず—— !

 「 ダルシー、祐樹は参加者じゃないからきっと警察も気づかないよ——」

舞の言葉に、孝助もなるほど、とつぶやいた。
しかし、ダルシーは未だ賛成しない。

 「 ……頼んだから。いい ? まずかったら逃げてよ ?」 

 「 そんなことにはならないだろ…。
   俺がなるべく香奈のいる所から離れたところまで奴らを連れて行く。
   外に警察がほとんどいなくなったと思ったら香奈を探し出して終了——」

 「 ちょっと ! ? そんなに事がうまくいくと思って———」
 「 思ってる。そうじゃないとこの状況じゃ何も出来ないだろ」

やっと、渋々ダルシーは頷き、手短に話し合った。

香奈のいる位置は先ほど電話でダルシーが本人から聞きだした。
しかし、ほとんど手がかりになっていなかった。
香奈は現在移動しているが、違う建物内に入ったり出たりを繰り返しているらしい。

見えるものといったら、舞たちのいるマンションで近くに中学校
遠くに飲食店等があるらしい。
人はあまりいない為、目立ったことが出来ないようだ。

 「 ……じゃあ、此処が見えるんなら近くまで来れたってことか——」

話し合った結果、涼と舞が香奈を迎えに行くことになった。


 「 大丈夫 ?」
 「 俺はいいけど、舞は ?」
 「 私も大丈夫……」

 「 手、大丈夫 ?」
ダルシーは舞のことを心配したが、舞は此処に残るより自ら動くことにした。
無理はしないでと沙紀に言われ、舞は頷いた。







 「 じゃあ、俺行ってくるよ」
そう行って祐樹はドアを開けた。


 「 気をつけろよ」
 「 捕まらないようにね…」
そう言われ、頷くと祐樹は静かにドアを閉めた。




  
 「 ちゃんと帰ってくかな……あいつ…」

不安げにダルシーは呟いた。


はっきりいって



舞自身も不安でたまらなかった。



彼はもう一生帰ってこないのではないかと。