ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 幻想世界と儚い人間と。 ( No.1 )
- 日時: 2009/12/11 16:23
- 名前: 六 ◆BbBCzwKYiA (ID: IJ2q7Vk/)
1.空白夢幻
先程まで温もりがあったであろう冷えたコーヒーの入ったカップが、不意に微かな音を立てて倒れた。忽ち、木製の机の上に黒い液体が広がる。その様子を、ただそこに立って、机に広がる黒いものを、ただ如月愁はそれを見つめていた。
もう、何もする気が起きなかった。
何をしても、何が起きても何も思わず、何も感じず、彼は自分の中の虚無を感じるだけだった。
ここには、もう自分以外に何もいない。皆、居なくなってしまった。飲み込まれてしまったのだ。
何故か人を惹きつける、幻の霧に。
そこに行ってしまえば、もう戻れない。自分が望む物を、満たされるまで探し続けてしまうのだ。
しかし、それは永遠に見つからない。だから、ここにいた彼以外のものは、全て見つからないものを探して行ってしまったのだ。
あれに飲み込まれてしまえば永遠に戻れない。否、あれに飲み込まれたモノ達は既に帰る場所など無いのかもしれない。
ただ一人、彼だけは始めから。彼という人間が何時の間にか存在していた時から何も感じようとしなかった。この世界に存在する全てを拒絶していた。名前も、感情も、自分という存在すらも拒絶しようとした。それは出来なかった。自分を拒絶すると言うのは、死ぬと言う事だから、少なくとも彼は全てを拒絶しようとしている自分の中でそう認識していた。「死」と呼ばれる物についてだけは彼は他の感情を持っていた。…………「恐怖」という一般的に「普通」と呼ばれる感情を。
だから彼は、何も求めなかった。あの霧の中に行こうともしなかった。
世界が生み出したモノは、もちろんそれ自体も_____「嫌い」と呼ばれるモノなのかもしれない______全てを拒絶していた。
ここには、彼しかいなかった。彼を蔑む者も、彼の拒絶を砕いて勝手に踏み込んでくる者も、何もいなかった。
如月 愁一人だけの、彼が拒絶しない、恐怖を感じないただ一つのもの_____「孤独」の世界だった。
窓の外には白濁色の霧が蔓延していた。その事すらも彼には関係ない事だった。
何故ならここは_____彼一人だけの、「孤独」の世界なのだから。
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(………激しく駄文)