ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒の惨状 ( No.11 )
- 日時: 2009/12/13 19:24
- 名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)
第六話
状況は落ちついたが、秋久と老人の間は微妙な空気が流れていた。
「…聞いてもいいかな」
ソファで眠りについたはずの皐月が口を開く。外はすっかり暗くなっていた。向かいのソファには老人が身動き一つせず眠りについている。秋久は皐月のソファの裏で、床に横たわっている状態だった。
「なに」
無愛想に返答する。老人との口論の余韻が残ったままだった。
「なんで宮城くんは警察派なの?」
皐月は少し間をおいて、小さな声で「別に無視してもいいから」と付け足した。
「…兄ちゃんが、警察だったから」
答えたくないわけではなかったが、言い難いと感じていた。誰にいってもリアクションに困る答えだ。
「理由はみんな、単純なのにね」
意外にも皐月は息詰まるような事もなく、あっさりと言った。
「高岡はなんで?」
「ああ…なんかみんな言葉ではあーだこーだ言ってるけど、実際にはそんな明確な線は無いみたい。
ここは市長が政府派思考を尊重してて、警察は市役所の役員が何か違うものを動かしてて…徹底的に政府派地帯になったの。住民も特に自分達の生活に影響が出るわけじゃないから特に何も言わなくて…そのままなんとなく政府派になったの。なったのって、ちょっと違う気がするけどね」
秋久は少し身体を起こした。今の皐月の言葉には、気がかりな所がいくつもあった。
「なんだ?その、「何か違うもの」って」
「うーん…政府が派遣した警察同等の力があるもの…って学校で聞いたけど。よく分からない。
交番は取り壊されて違う外観の建物になって、制服も警察と違った物になったくらいで…事件があればそこに行って補導してたし…違和感はあったけど、特に変な所は無かったから」
皐月の曖昧な表現に、秋久は何か違和感を覚えた。「謎」という感情より、「不安」に近いものだった。
「……ふーん…」
秋久の町は、そこまで徹底していなかった。警察派の地帯には、警察が居たからそんな風に感じるのかもしれない。もちろん市役所はどうなっているか、などは、気にもしなかった。周辺からもそんな事は一切話題になっていない。
——なんだろう。この感じ…。
秋久は、この違和感の正体が不明のまま、眠りについた。