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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒の惨状 ( No.4 )
- 日時: 2009/12/13 18:22
- 名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)
血、悲鳴、爆音…。この記憶だけが頭の中でスパイラルする。秋久は、今にも狂ってしまいそうだった。
見渡す限り、動かなくなった人間しかいなかった。もうこの地帯も全滅に近い。警察派も政府派も、死ぬ姿は同じ人間なのだ。
秋久は右腕から絶たず垂れ流れてくる血を、抑えるのに精一杯だった。銃弾を発砲中の戦場で、流れ弾が当たったのだ。
ふらついた足取りで、当ても無く足を動かしていた時、自分が歩む足音しかしなかった空間に、ガタンと何かが倒れたような音がした。秋久は反射的にその方向に目をやった。
「…!」
崩れた建物の影から、少女と老人が居た。
老人は下を向き、立っているのがやっという感じで、少女に支えられている。少女は秋久を見るなり、怯えた表情を見せた。
——政府派か。
この地帯で生き残った、政府派の人間。政府派の人間は抹殺しろと言われている。
少女は涙を流して、怯えながらも秋久を睨んだ。怯えは手に持った銃であり、憎悪は「警察派」という部類にあるものからだ。
もちろん秋久は殺すつもりなど微塵もない。どうか生き残って下さい、そう心で呟き、二人の小さな人間に背を向けた、その時だった。
「おい!お前!」
大きな声と共に、片手に銃を構えた「同胞」が現れた。
「何をしてる!そいつらは政府派だぞ!銃口を向けろ!」
そう言って「同胞」は走りながら銃を構えた。少女は支えていた老人にしがみつき、きつく目を閉じる。
——兄ちゃん、こいつ今、人を殺そうとしてるんだ。何も意味無いのに。
赦してくれ母さん、父さん。赦してくれ兄ちゃん。
秋久は手に持っていた銃を構えた。
低い銃声が、空間に響いた。
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