ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 黒の惨状 ( No.8 )
日時: 2009/12/13 18:37
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

第五話



 皐月はこの地区に、ごく普通の家族で住んでいたらしい。

 しかし昨日、警察派の集中攻撃が突如勃発した。この地区が狙われる可能性もゼロとは考えてはいなかったが、あまりに無防備すぎた。
 爆破、狙撃、この他にも今の進んだ技術で、電気を使って強力な電気ショックを使うというのが使われた。この話に、秋久は思わず目をきつく閉じた。

 巨大な電気ショックは、まだ実験の過程にあり、実現にはまだ遠い段階であった。つまりその「実験」として、この地区が犠牲になったのだ。威力の制御がまだ出来ておらず、敵、味方関係なく被害が及んだ。
 家族は爆破に巻き込まれ、帰らぬ人となった。外出していた皐月は助かった。

 そこで皐月は状況についていけず、自暴自棄になり、警察派の溜まり場に、一人で突っ込んでいくところを、老人に止められたのだという。

 「止められたって、説得されたわけじゃないんですけど」

 皐月は照れ笑いを浮かべた。「いかにも」という感じの止められ方だった。

 『怪我をしたから手当てして欲しい』と、老人が言ったらしい。自暴自棄になり、精神的に正常とはいえない皐月に、手当てを申し込んだ。

 「それで手当てしちゃうのも、いかにもって感じだな」

 秋久がふっとそういうと、また皐月は照れ笑いをした。
 そしてなんとなく、皐月と老人は今を共に過ごしているらしい。皐月自身は、名を名乗ったらしいが、老人の方は名乗らないそうだ。それで皐月は「おじさん」と読んでいる。昨日知り合ったばかりとは思えないほど、老人と皐月の間には家族のような絆が感じられた。

 「おじさんが外の様子をどうしても見たいといって、静まったところを出て行って…。あとは宮城くんが知っている通り」

 短時間で、色々な出来事が起きた。なのに皐月と老人は、しゃんと今の状況を冷静に理解しているようだった。銃を持った兵士より、戦い慣れているのかと秋久は感じた。
 

 「…お前達は、俺はなんだと思う」

 長い沈黙のなかで、ようやく老人が一言発した。だがその一言は、質問返しだった。