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Re:     ヤミノナカデ ( No.5 )
日時: 2009/12/29 20:30
名前: ショーコ ◆2DNEbF3uNY (ID: zflF3NFd)

02




「……起きろ」

低い声が部屋に響く


——部屋?




少年は瞼をゆっくりと開けた

そこは狭苦しい部屋の中だった
だが明りはないので、辛うじて見える程度
ほぼ真っ暗である

その真ん中に鎮座するベットに、少年は横になっている


——悪夢は終わったのか

と、少年が体を起こそうとする




「っ!!ぃ゛ってぇ…」

喘ぎ声をあげて顔を歪ませる

体が引き裂かれるような痛みがともない
少年はベットに逆戻りした

改めて己の体を眺めると
手当てが施されていることに気づく



「起きたか……」

「!」

先ほどと同じ声がして、
少年は頭を上げる

真っ暗で顔は認識できないが
声からして男性であろう者が
ベットの隣に立っている


「……誰だよ」

少年は率直に感じたことを問う

「……醜いガキが転がってたんでな…
 面白そうだから拾ってやったんだ

 ありがたく思えよ?
 俺が拾わなきゃ死んでたぜ…」



——……醜いガキって俺のことかよ

少年があからさまに顔を顰める


「何だ、死にたかったのか?」
「…別に」

素っ気ない返事で返す





かわいくねェガキだ、と呟くと
次に男が問いかける


「てめぇ、何であんな場所に居やがった?
 あそこは…「思い出せない」

男が言い終わる前に、少年が呟いた



「何も……思い出せない…」

少年が俯く


そう、少年には
何の記憶も残っていなかった




「………記憶喪失ね……

 こりゃまた厄介なガキ拾っちまったわ…」


男はベットにもたれかかる



「何はともあれ

 あの場所にいて生きてるなんて奴ぁタダもんじゃーねーよな……」

「…さっきからあの場所あの場所言うけどさ…
 なんだよ、あの場所って…」

少年が声のする方を睨む




「…そのうち話してやる」


その時
男が不敵な笑みを浮かべていたのを

少年は知らない