ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白き羽の騎手 ( No.4 )
日時: 2009/12/26 16:04
名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)

2 キャンバス

 腰まである黒髪を赤い結い紐で、後ろの低い位置でまとめた少女は、賑やかな街を歩いていた。
 彼女の名前はユイ。15歳だ。
 紅い目で、周りを油断なく見渡す。

 「ねぇねぇ、騎手さん」

 抜けた声がユイに呼びかけた。
 振り返ると、白に近い銀の髪の男の子が、いた。

 「これ買ってよ」

 彼が指差しているのは、変わった形をした果物。恐らく、この国の特産物だろう。

 「レン、私達は遊びに来たんじゃないんだよ」

 ユイがそう言うと、レンはぷぅーッと頬を膨らませた。

 「それに、こんなに大勢に人の前で、騎手さんなんて呼ばないの」

 無理だとは分かっているが、ユイはとりあえず注意した。
 今まで散々注意して来たのだ。直してくれた事は、一度もない。
 だが、それもそのはず。レンにとって、ユイは『騎手』でしかないからだ。
 いくらヒトの姿をしていても、レンはヒトではない。
 その事を、改めて感じさせられた。

 「ねぇねぇ、騎手さん」

 また、レンが呼んだ。

 「なーに?」

 「今回のキャンバスはどう?」

 それを聞いて、ユイは眉を少し潜めた。

 キャンバス。
 それは、『白き羽の騎手』及び『均衡の女神』が次元を通るため、もしくは、どの次元が歪んでいるのかを、調べるために使うもの。
 『均衡の女神』の宮殿には、様々な絵が並べられている。
 全て、『次元』へと通じる入り口だ。
 歪みが発生している所は、絵が変わってしまう。
 そして、その変わってしまった部分を、直すのが、『均衡の守人』——『白き羽の騎手』

            ユイの役目なのだ。