ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Psychotisca-サイコティスカ-〈ちょいとグロいです ( No.1 )
日時: 2009/12/29 00:11
名前: 冬宮準 (ID: OmdF/R4B)

§Piece:0 Prologue§

「ふむ。親が死んだショックってヤツですか…。彼女はサイコティスカにかかってますね」

一人の警備員が、もう一人の警備員に言った。彼らの目の前には、一人の少女と二つの死体がある。血の海に沈む冷たい死体は恐らく少女の両親であろう。なのに、少女は泣いていなかった。涙一滴さえこぼれていなかった。ただ、こぼれていたのは、嬉しそうな笑み。前に転がる二つの死体を、少女は待ちに待ったプレゼントでも見ているかのような、好奇心旺盛な瞳で見つめている。彼女は小さな笑い声をもらし、言った。

「ふふ…。屍って綺麗…。血も真っ赤で、熟れたリンゴみたいで美しいよね…」

少女は狂ったようにそう呟いた。それを聞いた警備員は、ため息をつきながらメモ帳に、青いインクのペンでちょっとした…いや、少女にとっては重大なメモをした。


 メア=リゼット
 2009年11月13日金曜日
 サイコティスカ発症。
 死体や血を好む。よって閉鎖都市カージュに監禁決定。


警備員はメモとペンをしまうと、もう一人の警備員に視線を移し、コクリと一つ肯いた。そして、少女に近づき、彼女の、少しでも触れれは折れてしまうそうな細い腕を掴んだ。暴走した獣のように狂いに狂う少女を引きずるようにして黒い車に乗せた。

檻という名の闇へ繋がる道の、案内人のように—…。