ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Psychotisca-サイコティスカ-オリキャラ募集中! ( No.11 )
- 日時: 2009/12/29 23:33
- 名前: 冬宮準 (ID: f0LIvz7Q)
§Piece:1 Wall-too-tall§
ここは狂いに狂い、正常な者達に危害を加えかねない「モノ」達、サイコパスを幽閉するための閉鎖都市カージュ。この都市は空に浮かぶ雲に付いてしまいそうなほど高い壁に覆われている。鉄か何かで出来ていて、物凄く重そうな、巨人でも壊せないような壁。それはいつも氷のように冷たくサイコパス達を閉じ込めていた。サイコパス達はその壁を「ウォール・ツー・トール」と、「高すぎる壁」と呼び、それをいつか破いて美しい外の世界を見たいと、ほのかな希望を抱いた。
「いつ見ても高いね」
とある少女は言った。ベージュのセミロングの髪と黒と灰色のチェックのスカートを揺らし、ウォール・ツー・トールに近づいていく。彼女の緑色の瞳に、灰色の冷たい壁が移る。彼女は小さな手を壁に伸ばし、中指を大きな板に触れさせた。シン、とした冷たさが体中を駆け抜ける。その心地いいのか悪いのかよくわからない感触を味わっていると…
バチッ!!
少女の体を巡っていた冷たさが、急にピリピリと痛々しく弾ける電流へと変わった。少女は壁から中指を離し、体中に広がる痛みにしゃがみこんだ。後ろから足音が聞こえる。多分、警備員だろう。カージュとサイコパスを管理する、これもまた冷たい男。
「こらこら、その壁に触ってはいけないと、カージュの規則であるだろう」
少女は立ち上がって、警備員の方へ振り返った。緑色の瞳は下を向いている。
「君、名前は?」
「メア…です」
少女は小さく答えた。そして顔を上げると、ハッとして息を呑んだ。警備員の手には、いつの日か見た覚えのあるメモ帳とペンが握られていた。サラサラと、少女…メアの名を書き込んでいく。
「メア…か。よく書く名前だな。この前も注意しただろう、この壁に触るんじゃないって」
「だってぇー…。触りたかったんだもん」
メアの自由人流すぎる返答に、警備員は少々呆れた顔をし、ため息をついた。メモ帳とペンをポケットにしまうと、
「もうやるんじゃないぞ」
という文章を残して、その場を去って行った。警備員はそんなに高くない建物と建物の間の闇へと消えていく。彼が見えなくなるのを確認すると、メアはいつものスキップで彼女の「居場所」へと戻っていった。