ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Psychotisca-サイコティスカ-オリキャラ募集中! ( No.20 )
- 日時: 2009/12/30 01:17
- 名前: 冬宮準 (ID: f0LIvz7Q)
§Piece:3 Bloody corpses§
キィ、と、ヘイジーブルーのドアは音を立てながら開いた。そのドアノブは、メアが握っている。彼女はヘイジーブルーの店長、リエリィを探しに、ティティと外へ出ることにした。いつもならこの時間には市場から帰ってくる頃なのに、なかなか帰ってこない。酒屋にはレイヤ一人が残されている。彼は少々寂しそうな顔をして、彼女達を見送った。
メアとティティは、キョロキョロしながら大きな道を歩いた。彼女らのブーツが、カツカツと音を立てる。その音は彼女達を挟む建物によって木霊し、意外と美しい音を奏でた。メアが密かにその音色を楽しんでいると、急にティティの足が止まった。彼女は暗い路地のほうを見つめている。それに気がついたメアは、振り返って問いかけた。
「ティティ、なんか見つけたの?」
ティティは答えることなく、路地のほうへ走り出した。ティティが路地の闇へ飲み込まれていくのを見て、メアも置いて行かないでというように走り出す。メアが路地に入ると、彼女の飲みたくは無いが「美」として見ることの出来る「何か」の匂いが鼻を付いた。恐らくティティもこの匂いに反応しているのだろう、気持ち悪そうにカーディガンの袖で鼻を覆っていた。路地の闇を切り裂くような光の方へと走っていく。やがて光はどんどん眩しくなり、闇が完全に消え、路地の外へ出た。それと同時に、ティティは息を呑んだ。
無数の血塗れの死体が、道を覆いつくしていた。紅の液体が、ティティのブーツの先までまるで生きているかのように広がってくる。ティティはメアに目をやった。メアの顔に「怖い」という色は無かった。むしろ、「美しい」という色に満ち溢れていた。メアの口元には小さな笑みが、手には「触りたくて仕方が無い」というような震えが。ティティが予想していた通り、メアは血だまりの中へ踏み込んでいき、どこかの男の死体の前にしゃがみこんだ。
「へへ…内臓丸出しだね…。血が物凄いキレイかも…」
「病気」が、「サイコティスカ」が、メアを完全に操っていた。ティティは見ているのが嫌になってきたのか、死体から離れろと、メアの腕を掴み引いた。しかしメアはそんなことなど気にすることも無く、その冷酷な瞳で死体を見つめている。メアが死体に触れようと、手を伸ばす。と、その時。
「…あら、死体に触れようとするとは、趣味が悪いわね。血なら許すけど」
高く美しい声が、メアとティティの耳に流れ込んだ。彼女達は顔を上げ、その声の主を目の当たりにした。サラサラロングの黒髪を揺らし、紅い瞳を細めた女性が、腕を組んで立っていた。そんな彼女の隣には、左目に包帯を巻いた少女が大人しく立っていた。彼女の長い髪は腰の辺りで綺麗に纏められている。しかしその白銀の髪の先は、彼女の下に広がる血の海に浸っていた。それと同じ血に染まった黒い大剣を、彼女は握っている。右の緋色の瞳は、静かにティティを見つめている。そして、もう一人。背の高いスーツ姿の男性が、これもまたクールに立ち尽くしていた。彼の手には鉛筆やら鋏やらといった筆記用具が握られている。彼の赤と緑のオッドアイは、眼鏡の底からメアを見つめていた。
「あら…物凄い血じゃない」
黒髪の女性はカツカツとヒールを鳴らしながら前へ進んでいった。そして手をメア達の方へ向け、少々楽しそうに言った。
「あなた達の血はどんな味かしら…?」