ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Psychotisca-サイコティスカ- ( No.53 )
- 日時: 2010/01/02 00:25
- 名前: 冬宮準 (ID: OI3XxW7f)
§Piece:5 Guerrilla§
一人の男が、暗闇の中を走っていた。息を切らして、汗をビッショリかいて、焦ったように走る。空では満月が彼を見ていた。男の腕の中には黒い大きめのバッグが。男は建物と建物の間を鼠のように走る。キョロキョロと首を動かす。と、その刹那。
「やっと追いついたぞ!!御主の罪、我ら『ゲリラ』が裁く!!!」
少女の声が元気良く響く。時代劇に出てきそうな和風
な口調。男は立ち止まり、バッグを落とした。
「ゲ…ゲリラか!?」
「そうと言ったじゃろう、分からぬのか?この薄汚い溝鼠が!!」
シャ———ッ!!!
奇妙な音が、カージュ中に響いた。男は叫んでいた。なぜなら…
男の体中に、青や緑といった大量の蛇が巻きついていたからだ。蛇は一斉に口を大きく開け、牙を除かせる。そして、ガブリ、と男に噛み付いた。
「う"あああああぁああッ!!」
男はまた大きく叫ぶ。すると、大きめのサバイバルナイフと何枚ものトランプが、矢のように男の方へと飛んでいく。
グサッ。
この状況にしては簡単な音をだして、サバイバルナイフとトランプが男の背中と腹に、見事に刺さった。そして、男は爆発した。脳が恐怖で埋め尽くされたのか何なのか。いかにも悲惨な死に方だった。
「よし。下に降りるぞ」
そういって、建物の屋根にいた「少女」は言った。彼女の隣には、彼女よりも背の高い青年と、少女よりも低い別のの少女が立っていた。青年は眺めの黒髪を、別の少女は美しい金髪を揺らしていた。和風口調の少女が命じたとおり、二人は彼女と共に下に降りていった。ただ「降りていった」のではない。ジャンプ一回で、地面に華麗に着地してしまった。リーダーの様な存在である真ん中の少女は、赤い靴の先で男が落とした黒いバッグを軽く蹴った。チャックが開き、大金が雪崩のように出てくる、出てくる。
「マリヤ隊長、今回の男は簡単でしたね」
シルクハットをかぶり直しながら、金髪の少女が言った。マリヤと呼ばれた金髪に赤眼の少女は、首に巻いている蛇を撫でながら答えた。ドレスのミニスカートのフリルが、風に撫でられた。
「ザードとシェリーが童(わらわ)の傍にいてくれるからこそゲリラとしての使命が果たせる。いつも感謝しておるぞ」
ザード—…黒髪の青年は落ちたサバイバルナイフを広い、少しいやそうに言った。
「あ"ー、あのキモい男の血がついたオレの大切な武器…。なんかいつもと違ってみるの嫌になるぜ…」
シェリーはエメラルドのペンダントをいじりながらクスクスと笑った。それにつられてマリヤも笑う。そして最後にはザードも。その笑い声は、暗いカージュ中に響いた。