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Re: 歪んだアリスと壊れた世界 [02up] ( No.31 )
日時: 2010/01/17 19:25
名前: 柊 ◆p4Tyoe2BOE (ID: PgwOaOcY)

 僕だってあんな事になるとは思わなかったさ。


03


「昏中藍羽……はぁ……それで、何か用ですか」

 手を腰にやり仁王立ちする女性——昏中さんとやら。口は緩く弧を描いている。

「そうやそうや。忘れる所やった。うちこの場所に行きた思っとんねんけど」

 僕の言葉に本題を思い出したのか、スーツの内ポケットから手のひら大の紙切れを取り出した。
 はい、と僕にそれを手渡すと昏中さんは辺りを興味深げに見回し始めた。
 昏中さんから僕はわたされた紙切れに視線を移した。
 手のひら大の紙切れには大雑把な地図のような物が書き記してあった。そこの中にはほとんど目印と言っていいような情報が書き込まれていなかったため、何か他に書いていないか紙を裏返した。
 僕は走り書きのように書かれた住所に気付くと女性に声を掛けた。

「あー、えーっと昏中さんでしたっけ?」
「んー? あ、この場所わかんの?」
「知ってますよ」

 僕は書かれた住所に向かう道を指さしながら答えた。
 昏中さんは再び僕の側によってくると地図と僕の指の方向を交互に見ながら言った。

「この道をまっすぐ行って、二つ目の角で左に曲がってください。後はその道をまっすぐ行った突き当たりです」
「ほー、そんな近かったんか。この辺は細道多ぅて苦労しとってんよ。ありがとさん」

 僕の説明を軽く頷きながら聞いていた昏中さんはどうやら大体の辺りは付けていたようで、一度で理解できたようだった。
 僕から紙切れを受け取った昏中さんは手を上げながら去っていった。
 何というか嵐みたいな人だった。

「……なんだったんだ……?」

 しばらく昏中さんが歩いていった方向を見つめて、僕はため息を一度漏らすと、自分の家に帰るかと踵を返した。