ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄から死神少女。 ( No.3 )
- 日時: 2009/12/29 14:53
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
非日常02 死神少女、名乗る。
「……えーと、はい?」
自分の名を名乗るところまではいい、けどその後なんて言った? 死神? 死神って言ったよな? あんな物騒な鎌持ってる時点で普通じゃないが、此処までいくと本格的な電波少女か?
冗談かとも思ったが、少女の目は真っ直ぐとしていてどうやら本気のようだ。冗談なら「お前大丈夫か?」とか軽々しく言えるが、ここまで本気だと逆に言葉が詰まる。
「だから死神だって言ってんのよ。お前、耳悪いの?」
いや……耳は悪くないんだが。悪いのはお前の頭だと思うんだが。
こんな事を思っていても、うかつには言えない。変なことをいえば、傍にある大鎌で叩き切られるかもしれない。
もしかしたら死神のコスプレしてんのか? 黒服に巨大な鎌、これで美少女じゃなければまさに死神だ。
「つまりお前は、エヴァンジェリンという名の死神のコスプレをしてるんだな? 分かりづれえよ、最初からそう言えって」
「何言ってるのお前。私の名前はエヴァンジェリン! 死神よ!」
すいません、俺はどうコメントすればいいのでしょうか。こいつの親はどういう教育してるんだ? こいつの親は子供にこういう事を教え込んでいるのか? 親も電波なのか?
俺が無言でいるのを見て、自称エヴァンジェリンという名の死神は、傍にある大鎌を掴む。
「信じてないの? なんなら、お前の魂狩ってあげようか?」
自称死神はギラリと目を光らせながら言う。魂は狩られなくても、これじゃあ魂じゃなくて俺が狩られる。
さすがに俺が狩られちゃまずいので、何とかしてこの電波少女をいさめなければ。
「ひとまず落ち着け。お前、どっからどう見ても痛すぎる電波少女だぞ? とりあえず本名教えろ、本名」
『そこの貴方! 人間の分際で、エヴァ様を貶すような行為は即刻やめるです!』
ん……? 今どっからか声がしたぞ?
辺りを見回しても誰もいない……と思ったら、少女の腕の中の黒猫が喋ってる?
「いいのよウィニ。こいつ人間だから、私の存在が信じられないの。最後まで信じないようならこいつの魂を狩って、私が死神であることを証明すればいいんだから」
えっと自称死神は腹話術ができるんだな。そうなんだな、きっとそうだ。
けどそんな俺の考えを、次の黒猫の行為が全否定した。
『お初にお目にかかるです、人間。私はウィニフレッド=シンクレアと申しますです』
黒猫が眩い光りを放ったと思ったら、漫画のように黒髪にかぼちゃパンツを穿いた小柄な少女へと擬人化した。此処三次元だよな。擬人化って二次元だけの筈だよな。単なる空想の一部の筈だよな。
俺のそんな考えを読み取ったのか、ウィニフレッドとかいう少女はいきなりナイフを取り出し、今にも襲い掛かってきそうな感じで構えている。さっきから少女に鎌だのナイフだの、なんという不似合いな組み合わせばっかりなんだ。
「……えっと、何のイリュージョン? ウィニフレッド? 何それ?」
『だから私はウィニフレッドという名の悪魔で、エヴァ様を主としているんです!』
死神の次は悪魔か。電波少女を超えて狂人かこいつらは? でもなんかエヴァンジェリンとかいう奴と、ウィニフレッドとかいう奴の主従関係は分かる気がする。喋り方っつーか、名乗り方がまったく同じ。
俺は自称死神のエヴァとかいう奴にヘルプの視線を送るが、今にも斬られそうな俺を無視し窓の外を見つめている。こいつ、俺が斬られてもいいってか……。そんなに死神を認めない俺が嫌か。
そう思っていたが、それにしては何か変だ。スルーしているというよりは、何か見ている感じ……。ウィニフレッドとかいう自称悪魔も、何かに気づいたらしく自称死神と共に窓の外を見つめる。
そして自称死神は溜め息をつく。
「あーあ、見つかっちゃったみたい。ウィニ、猫に戻りなさい」
『はいです』と自称悪魔は頷くと、ぼんと音を立てて黒猫に戻った。
見つかったって……何にだ? まったく分からない。
状況が理解できない俺を見かねたのか、自称死神は俺に説明をした。
「お前、分からないの……? どうやら私達」
俺はハッとして辺りを見渡す。……ようやく俺も分かった。
「彷徨える亡霊(アストラル)に、囲まれちゃったみたい」