ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 煉獄から死神少女。 ( No.5 )
日時: 2009/12/29 14:54
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

非日常04 死神少女、居候になる。

「あー終わった終わった」

 自称死神は疲れたように溜め息をつき、床に座り込む。まああんだけ化け物がわんさか出てくれば、それも仕方無いか……。
 ていうか今何が起きたんだ? 落ち着いて考えてみると、俺「契約する」とかその場の状況で言っちゃったけど。自分で言っておきながら言うのもあれだが、契約って俺はどっかのファンタジー漫画の中にいるのか?
 まあそれはひとまず置いておくとして、今回はこの自称死神のおかげで助かった。礼言っとくか。

「えーっと、有難うな。自称死神」
「自称じゃない、死神。それと——私の名はエヴァンジェリン」

 エヴァンジェリンはぷくうっと頬を膨らませてそう言った。こいつ……美少女だけに、こういう仕草は中々可愛い。いつもそういう態度をとればいいのにな。
 そういえば、こんな普通の街中の家で化け物と死神が戦っていたというのに、俺の家は一つも傷がついていないし、街中を歩く人は誰もこちらを見ていない。

「なあ……。何で家壊れてないんだ? それに周りの通行人、何事もなかったかのように誰一人としてこっちを見ていないぞ?」
「アストラルは死んだ人間の魂だから、生きている人間には誰一人として見えない。私と関わりを持ったお前は見えるけどね。通行人が誰一人としてこちらを見ないのは、ウィニの力」

 よく分かんねえけど、そういう事なのか。高校生一人と中学生だけしか住んでいない家に、鎌を持った少女が化け物と戦っている事が見えていたら、それこそ一大事だもんな……。
 何とか危機は乗り越えて一件落着になった筈なのに、死神エヴァは此処を動こうとしない。それどころか、テーブルに置いてあるお茶を啜っている。

「おい……アストラルとかいう化け物は消えたぞ? お前は帰らないのか?」

 するとエヴァはきょとんとして俺を見る。何か嫌な予感が……。

「何言ってるの? 私はお前を契約者としたのだから、今日から此処に住むのよ」

 えーと、はい? 美少女がいきなり知らない家に押しかけてきてそのまま住むという、ラノベみたいな展開が今まさに現実に?
 俺は反対しようとしたが、口を開こうとしたところでそれを止めた。何故ならエヴァが、大鎌を構えていざ叩き切らんという体勢で俺を睨んでいたからだ。

「……まあいいけど。俺の家広いし、二人だけじゃ部屋も余っていたところ……ん?」
 
 俺の家って結構広いからエヴァの部屋くらいある筈……。どうせ二人しか住んでいないし……。
 ……俺今二人っていったな。そうだ、この家に住んでいるのは俺だけじゃない……。

「そうだ、紫苑になんて説明すればいいのか……」

 ***

「ただいまー、すぐご飯作るから待っててー」
「お前が司の妹の泉井紫苑?」

 紫苑が七時頃に、部活を終えて帰ってきた。のはいいが、いきなりエヴァが玄関に仁王立ちで迎える。
 ちょ、待ってストップストップ! いきなり知らない美少女が居たら、俺に変な疑いかけられるから!
 という俺は、リビングのドアから玄関の状況を覗いている状態にある。無論、エヴァが変なことをしたらすぐ飛び出せるようにだ。

「えっと、どちら様……?」
「私はエヴァンジェリン、煉獄から来た死神。今日から此処に住むことになったから、宜しく」

 おいいいいい!! いきなり死神って名乗るか普通! 死神には常識ってものがないんですか? 日本の常識が通じないんですか!?
 紫苑がどういう反応をするかとハラハラしながら見てたが、なんと予想外の展開に。

「死神でエヴァちゃんって言うんだ。私は紫苑、中学一年生。宜しくねエヴァちゃん」

 おいいいいい!! 妹の紫苑! お前は泉井家の泉井紫苑じゃなかったのか!? 何でそんな簡単に死神を認められるんだ? こいつも電波だったのか!?
 俺はぐったりとしながら玄関に出て行き、二人を連れて再びリビングに戻った。母さん、父さん。貴方達の知らないうちに、泉井家に一人の少女が転がり込んでしまいました……。