ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 煉獄から死神少女。 ( No.7 )
日時: 2009/12/29 14:55
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

非日常06 死神少女、見送る。

 ***

 エヴァ、ウィニの死神&悪魔+シャロン、ユリアという新たな居候が来ながらも、何だかんだで休日を乗り越えた俺。毎週楽しみにしていた休日を「乗り越えた」なんて言い方をする日が来るとは……。
 そしてやってきた月曜日、つまりは学校という名のかったるい五日間の始まりでもある日。紫苑は既に中学校に行っており、玄関まで出た俺は、怪しい4人組みに見送られ学校に行くことになった。

「行ってらっしゃーい」
『司さん、行ってらっしゃいです』
「頑張ってきて下さいね、司君」
『とっとと行きなさいよ、司』

 エヴァ、ウィニ、シャロン、ユリアの順でお見送りの挨拶をする。どうも最後のツンツン娘の挨拶だけがムカつくな……。
 少しムッときながらも、何事もなく家を出た俺。これから毎日、こうなると思うと何だか少し気が重くなるな……。

 ***

 俺の通う高校は、私立の風之宮高等学院。この私立校に入った理由は進路に迷ってた時に中学からの親友、望月光輝に風之宮学院に入らないかと誘われたから、何となく入ったといういい加減な理由だ。特別頭の良くない俺は、偏差値がまちまちの学院に入ることに、特に反対する理由もなかった。
 そして入ってから数ヶ月。俺は特に変わらず学院生活を送っている。

「おーっす、司! 今日は遅刻しなかったんだな!」
「うっせえよ光輝、この前はたまたまだ、たまたま!」

 学校に着いた俺は、風之宮学院の朝休みに光輝のからかい半分で話しかけられる。いつもなら軽くスルーできる俺だが、あの電波死神共のこと、教室の女子のグループなどのざわめきが耳に入り、何だがイラつく。
 俺がカリカリしているのに気づいたのか、気づけば光輝は自分の席に着いていた。ったく、あいつは自分が不利な状況に立つと、いち早く逃げてるんだよな……。
 苛立ちを募らせていく中、朝休み終了を告げるチャイムが鳴る。教室の隅で騒いでいた女子や、廊下でふざけていた男子が次々と自分の席へ座る。全員が席に座るまではそんなに長くなく、あっという間にクラス全員が着席し、うるさかった教室が静かになる。俺の席は左の列、つまりは窓側の列の後ろから二番目だから、その光景がよく分かった。
 沈黙が走る中、それを破るように教室の前の方のドアが開き、セミロングの茶色っぽい髪を後ろで束ねた、1年2組の担任篠塚綾が入ってくる。

「皆おはよう。出欠とるから、名前呼ばれたら返事するように。じゃあまず逢坂!」

 一人ずつ名前を呼ばれていく。クラスの奴の名前を覚える気がない俺は、未だにクラスの3分の1くらい出席で名前を呼ばれていく奴の顔と、苗字が一致しない。
 俺の苗字は「泉井」だからすぐ呼ばれる。返事をし終わりぼーっとしていると、後ろで椅子が倒れる音がした。誰だよ、出席如きで慌てる奴は。ていうか出席って別に立たなくていい筈じゃ……。

「は、はい!」
「伊吹、お前は相変わらずドジだな……」

 伊吹……? 伊吹って確か、この前の席替えて俺の後ろになった……伊吹澪、だったか?
 呆れ顔で篠塚先生が伊吹を見つめる。長い黒髪を揺らしながら、返事をする伊吹。はわはわと慌てているその姿は、まさにドジっ娘の象徴と言える気がする。
 伊吹が席に座ると、それからまた次々と名前を呼ばれて出欠が終わる。

「一時間目は数学だ。頑張れよ」

 そう言って篠塚先生は教室を出て行った。僅かな準備時間の中、教室のあちこちで女子男子が群れて話し始める。
 さてさて、俺は数学の準備……ってえ!? やべえ、筆箱の中にシャーペン入れ忘れた……。休日ノートを整理している時、机に置きっぱなしにしたんだ……。どうしよう。
 俺があたふたと慌てていると、後ろからとんとんと何かで背中を突かれた。一体誰だと振り返ると……伊吹? 伊吹がシャーペンの押す部分で、軽く俺の背中を突いたらしい。

「あっ、あの! 泉井君! 良かったら、私のシャーペン使って。二つ持ってるから」
「おお、サンキュー伊吹! 助かった!」

 そう礼を言うと、伊吹がにこにことシャーペンを渡そうと筆箱を探る。と、座った状態でどうやったらそうなるかが不思議なんだが、突然滑って転んで筆箱の中身を落とした。床にバラバラと消しゴムや色ペンが散らばる。

「お前、本当にドジだな……」
「ごっ、ごめんね泉井君!」

 一緒に拾いながら伊吹が謝る。ほんとドジっ娘の鏡だ、コイツ。
 その時伊吹の顔は赤面状態。そんなにドジが恥ずかしいか……と俺は呆れながらそう思った。