ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白き羽の騎手 ( No.3 )
- 日時: 2009/12/29 21:59
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
「まずは、絵の間違いが分からないんだ」
キャンバスはいつも、宮殿の奥に保管されているため、均衡の守人は、どこが変わってしまっているのか、分からないのだ。
だが、どうしてそれが変わってしまっているのかを『均衡の女神』が知っているのか、ユイは知らない。
一度聞いては見たのだが、『均衡の女神』は教えてくれなかった。
「絵には、何が描いてあったの?」
レンのその問いに、ユイは腕を組んで、う〜んと唸った。
キャンバスに描かれていた内容を、思い出しながら、それを言葉にしていく。
「真ん中が真っ白で、それを囲むように、水、光、それと大地が描かれている絵よ」
一見したら、普通の絵だ。
これまでのキャンバスと比べれば、それは美しい絵だった。
ユイが今まで、見てきたキャンバスは、一目で歪んでいるとわかるような絵だったのだ。
真っ赤にそまった羽のキャンバス。
ただ黒一色で塗りつぶされたキャンバス。
天地が逆さまになったキャンバス。
そして、その中も、とても歪んでいた。
だが、今回は違っていたのだ。
この街は、どこを見ても人々に賑やかな掛け声や笑顔がたくさんある。
表面上からみ見れば、どこにも次元の歪みはない。
「お花がないんだよ」
「へ?」
不意にレンがそう言った。
とっさの事で、ユイは間抜けな声を出す。
「あはは、騎手さんもそんな声を出すんだね。いっつもは、冷静なのに」
「そんな事はもういいから、はやく言って!!」
顔を赤くして叫ぶユイを見て、レンはまた、からかうように笑った。
そして、その笑顔のままで答える。
「だから、お花が足りないんだよ。ほら、キャンバスには土も、お水も、お日様もあるんでしょう? それなのに、お花がないのは、おかしいんじゃないかなーって、思ったの」
その言葉に、ユイが感嘆の声を思わず漏らした。
レンの発想には、いつも驚かれる。
この子は純粋だから、こういう事が得意なのだろう。
「ほら、ボクをほめてー、ほめてー」
駄々をこねながら、引っ付いてくるレンの頭をクシャッと撫でながら、ユイは言った。
「さぁ、行くよ、レン。この次元の『花』を捜しに」