ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白き羽の騎手 ( No.4 )
- 日時: 2009/12/29 23:18
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
「伝説?」
ユイが聞き返すと、宿屋の亭主は頷いた。
とりあえず、聞き込みから始めた二人。
まずは、この世界の事——この国の事を理解するために、旅人を装っておしゃべり気分で街人に近付く。
この国は『バレナイル』と言い、ここ古い言葉で『大地の恵み』という意味だ。
ここの王族では代々、双子の上の子に継がせているという。
理由はよく分からないらしい。
そんなに都合よく双子が生まれるものかと、思うかもしれないが、実際、ども王も双子の兄弟らしい。
不思議な事だとユイは思わなかった。
今までたくさんの次元を巡ってきたのだ。よほどの事でなければ、その世界の秩序には驚かないようになってしまった。
聞き込みしていると、いつの間にか時間が経ってしまい、もう空は赤く染まっていた。
そこで、二人は今夜泊まる宿を探す事にしたのだ。
そして、見つけた宿の亭主が、「ここは滅多に旅人が来ないから、一つ面白い話をしてやろう」と言って、現在に至る。
「それで、伝説と言うのは?」
ユイはなるべく冷静を装っていた。
だが、心の中は身を乗り出して、この亭主に掴みかかりたい程、興奮していたのだ。
伝説とは、必ず何かを元にして創られている。
それは、一つの次元の規則のモノが多い。
なんで、自分はそんな大切な事を忘れていたのだろう。
「ここでは、一度も凶作にあった事がないんじゃよ。少なくとも、俺が生まれてからな」
この事には、さすがのユイも驚いた。
これはもう次元の問題ではない。
自然その物の秩序に反しているのだ。
「実は、これは伝説に深く関わっていてね。実は昔、ここの国は草一本生えなかった不毛の地でね。所がね、ある所から一人の少女が現れたんだ。どこから来たかは知らねぇ。ただ、そいつは大地と空に向かって、歌を歌ったんだ。すると、あっという間に、大地に花が咲き誇ったんだ。あれから、この国は凶作になった事はねぇと言われている」
「歌姫……か」
ユイがそう呟くと、亭主は大きな声で笑った。
「歌姫、他の国の人はそう呼ぶな。この国では、歌を『ハレイル』と呼ぶ』
「ハレイル? どういう意味ですか?」
「さぁな、俺は学無だ。知りたいなら、もっと別の人に聞いてみるといい」
ユイが頭を下げ礼を言うと、亭主は「お安い御用だ」とまた笑った。
「これがお前さん達の部屋のカギだ。本当に一部屋でいいのか?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
カギを受け取りながら、ユイはまた頭を下げた。
「そんなにかしこまるな。ここに泊まっていく奴は皆家族だ。俺の事はライヤと呼んでくれ。メシは後で部屋に運ばせるから、それまでゆっくり休んどきな。長旅で疲れただろう」