ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄から死神少女。 ( No.11 )
- 日時: 2009/12/30 16:42
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
非日常10 死神少女、魔剣と対峙する。
アテナの強襲にエヴァは反射的に大鎌を振るう。大鎌は剣に当たりアテナは一旦後ろに下がった。
さっきまでいきなりアテナが現れたことに焦っていたせいか、アテナの剣が普通の剣と何か違うことにエヴァは気づく。アテナの剣は禍々しい邪気を纏っているというか、どこか闇のように黒い。じいっとその剣を見つめていると、アテナがエヴァの疑問を察したかのように答える。
「この剣は貴方がお察しの通り、普通の剣ではありません。私の所有する神器で、“呪詛の剣”(ティルヴィング)と言います。絶対的な攻撃力を持つ神器ですが、その代わり持ち主を破滅に追い込む呪われし諸刃の剣——それがティルヴィング。支配するのに苦労しましたよ、随分と」
エヴァも聞いたことはある、神器“呪詛の剣”。その剣はアテナの説明通り、鉄だろうが容易く斬れる攻撃力を持つが、呪詛の剣と言う名からもうすうす予想は付くが、意志を持つ剣で次第に持ち主を破滅へと導く呪いの魔剣。だが当の所有者であるアテナは、苦労したと言いながらもその表情からはまったく苦労したようには見えない。
「そんな恐ろしい魔剣を抑え込んだ? 剣よりお前の方が恐ろしいわね……」
「褒め言葉として受け取っておきましょう」
アテネは変わらず無表情でそう言い、再び剣を構える。それに対抗する為、エヴァも大鎌でアテネに襲い掛かった。
***
澪の背後から出てきたのは、澪と丁度同じくらいの歳の一人の少年。ニット帽のような黒い帽子、黒いマフラー、黒いコートにガンベルト、更に闇のように黒い髪に充血したような赤い目と、エヴァと同じ吸血鬼のような色の組み合わせだった。澪は少年だからと警戒してないのか、にこやかに笑いかける。
少年は何をするかと思えばガンベルトから一つの装飾銃を取り出し、澪へと銃口を向ける。いつも天然でほわほわとしたオーラを放つ澪も、さすがにこれには驚き思わず口から悲鳴を漏らす。
「お前が神器“村正”の所有者か? その刀、こっちに渡してくんねえかな。通りすがりの女子高生を脅すなんて趣味でもないしメンドくせえけど……これでも一応“堕天の一団”(グリゴリ)十二柱の一柱だし……仕方ないからお前を脅して村正を奪うことにした」
村正、グリゴリなど澪にとっては意味の分からない単語ばっかり出てきたが、自分の命が危険だと本能がさっきから身体へと訴えかけている。が、逃げようにも身体が動かない。
謝っておとなしく刀を渡すべき、自分の命を救いたければそうするのが一番だろう。しかし此処で目の前の少年にこの刀を渡してはいけないと、よく分からないが命の危険と共に本能がそう言っている。自分の命が危険で助かりたいのに、その助かる方法を実行しようとしない——何とも矛盾していると澪は思った。
どうするか考える時間が欲しいところだが、少年はそれを待ってくれなかった。ゆっくりと、少年が引き金を引こうと指をかける。澪は逃げたくとも、足が凍ったように動かない。
「その刀——渡せば助かるぜ、お前」
「……この刀、どうする気なの?」
「いいから早く渡せ」
少年がそう言い放った時、銃が何者かの一撃によって弾かれた。少年はかすかに驚いたように弾かれた銃に目を向け、反対方向の銃を弾いた衝撃の方を向く。
澪も驚いて振り向くと、そこに居たのは大鎌を持った栗色髪の少女、つまりシャロンだった。
「心配になって来てみたら、怪しい気配がするものびだから……。家で待機したままじゃなくて良かった」
「……誰だ、お前。邪魔するならお前を撃ち殺して村正を奪うまでだが?」
少年は弾かれた銃を拾い、澪に向けていた銃口を今度はシャロンに向ける。少女の姿をしているとはいえ戦う術を持っているシャロンは、銃口を向けられたところでビクともしない。
それを見た少年は引き金を一気に引き、弾丸を飛ばす。弾丸は太陽のような光を纏っている、灼熱の銃弾。その弾丸をシャロンは軽く避ける。
「その銃は普通じゃないよね。それも神器の一種かな?」
「ご名答。俺の所有する神器“太陽弾”(タスラム) それだけじゃない。この銃が他の神器と違うのは」
口の端を少し上げてにやりと不敵に笑うと、少年はガンベルトからもう一つ銃を取り出し、銃弾を乱射する。弾丸の嵐にシャロンは翡翠色に輝く円——魔法陣を出現させ、ドーム型の盾で弾丸を防ぐ。だが、その
盾にも段々ヒビが入り始めてきた。
「驚いたか? 俺の神器タスラムは二つで一つ……つまり二丁拳銃ってやつだ」