ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 煉獄から死神少女。 ( No.4 )
- 日時: 2009/12/30 16:39
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
非日常03 死神少女、契約する。
周りを見ると下品に涎を垂らし、今すぐにでも襲い掛かってきそうな半獣半人のような奴らが、俺達の周りを取り囲んでいた。半獣半人どころか、目玉が片方無い奴、顔がたくさんついている奴など、本当に化け物のようだ。
死神、悪魔、その次は化け物か……。俺は知らないうちに異世界にでも旅立ったのか? どこのファンタジー漫画だおい。
「おい自称死神……。こいつらがアストラルとかいう奴か?」
「自称じゃないわ、死神よ。そう、そいつらがアストラル。何かこの世に未練があったりとか——そういう奴らが死神に魂を狩られることを拒んで、この世に居続けた結果がこれ。死者の魂がいつまでもこの世にいると、やがては負の力が増幅しこんな醜い姿へとなるの。気をつけて、そいつらは人の魂を喰らうわ。魂を喰われたら……アストラルの代わりにお前があの世逝きね」
こんな奴らの代わりにあの世逝きだと? 冗談じゃない……。そんなふざけたことがあってたまるかよ!
俺がアストラルとかいう奴に殴りかかろうとすると、それを自称死神が鎌で止めた。
「おいっ、どけよ! 俺はこいつらを……」
「何言ってるの? お前がアストラルに殴ろうとしたところで、拳は空振りして終わりよ。考えてもみなさい。アストラルは本来なら、この世にはもう“いない”存在なのよ? 私達死神みたいに、アストラルを狩る力を持ってない奴にこいつらは倒せない!」
おいおい馬路かよ……俺は指を銜えて此処で見てることしかできないのか? こんな小さい女の子にしか頼れないのか……?
俺が悔しそうに顔を歪めていると、自称死神は俺の目を見て言った。
「安心しなさい、私一人でもこいつらは倒せる。お前はそこで待ってるだけでいい」
自称死神は身の丈よりある大鎌を持ち上げて、その鋭利や刃を振るう。鎌は次々と化け物共に直撃し、粒子となって消えて行く。
こいつ……本当に死神なのか? ここまでくると、さすがに認められなかった死神を認めるようになってしまう。
だが化け物共は思ったより数が多く、切っても切っても現れる。こいつらクローンかよ……!
一人対大勢という圧倒的不利な状況で、敵を倒していった自称死神だかついに隙をつかれ、壁に吹っ飛ばされた。
「お、おい! 大丈夫かお前……」
「平気……お前はそこで待ってればいいの」
変なところを打ったらしく、よろよろと立ち上がる自称死神。傷を負いながらも、なお次々と出てくる化け物を斬って行く。
こいつ……全然笑わないし、自分のこと死神とかいう電波だけど、すげえ優しい奴なのかもしれない。化け物共を倒すだけなら、俺なんて庇わないでとっとと倒せばいい。
俺は耐え切れず、ついに訊いてしまった。
「なあ、俺に何かできることはねえのかよ!? 俺も何か力に……」
「……一つだけあるけど、お前を巻き込むわけにはいかない。お前はお腹が減って倒れた私に、ご飯を食べさせてくれた。これはそのお礼」
自称死神の言葉を聞いて、こいつは俺の思っていたようなむかつく奴ではないんだと思った。只、少し不器用なだけだったのかもしれない。
だから俺は、俺を助けてくれているこいつの力になりたい!
「俺に出来ることなら何でもする! その方法が何か教えてくれ!」
すると自称死神は鎌を止め、静かにその方法を告げた。
「……契約、私と“契約”すること。もし今のお前に私を助けてくれる勇気があるなら、契約して欲しい」
「え?」と俺が聞き返す前に、俺の足元に光る円が出現した。変な文字や模様が描かれている。これって……ファンタジーとかに出てくる『魔法陣』ってやつか?
何が何だか分からない俺に、自称死神は叫んだ。
「私と契約すると……『エヴァンジェリン=アリットセンと契約することを誓う』とその円の中で言うのよ!」
よく分からないけど……とりあえずそう言えばいいんだな!
「俺は……泉井司は、エヴァンジェリン=アリットセンと契約する!」
俺が円の中心で出る限りの声で叫ぶと、只光を放っていただけの円が黄金の眩い光を放ちながら、俺を取り囲む。
するとどうだろう、自称死神までが黄金に光りはじめる。何がどうなってるんだ? 契約に成功したのか?
何か不思議なオーラを纏いながら鎌を構える自称死神に、化け物が突如怯える。
{お前は幻獣使い——“竜の巫女”か……!}
化け物がそういい終える頃には、自称死神によって化け物は全て一掃されていたのだった。