ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Requiem〜約束の鎮魂歌〜/オリキャラ募集中 ( No.10 )
- 日時: 2010/01/05 20:45
- 名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)
Tune02 情報屋-advice-
「私としたことが、完全に見失った……」
エルザは誰もいない路地裏でがっくりと肩をおとした。
また厄介なことにならないといいのだが。
この人間界はまだ夕方だが、夜になれば何が起こるかわからない。
人間界と言っても、少数派で魔術師だっている。人間に恐れられてはいるが……。
こうなったら“あの”少女に頼むしかない。
エルザは一人で頷くと深い緑の瞳を閉じ、その名前を小さく呟いた。
「エルゼ=クレヴィング」
その瞬間、エルザの前に風が渦を巻いてゆく。
それは周囲の砂を巻き込み、小さな竜巻と化した。
エルザはそれを静かに見つめる。
しばらくすると、竜巻の回転は徐々に速度を落とし、するするとほどけていった。
あとに残されたのは一人の少女。
「私の名を呼びましたか?エルゼリア=カーナック」
見た目には十二、三才の少女エルゼは無表情で言った。
全身に纏った黒衣が、太股辺りまで伸びた金色の髪を一層際立たせる。
一点の濁りもない翡翠色の瞳は、エルザをしっかと見据えていた。
「ええ。ファトが監禁中だって言うのに脱走して……それを探してほしいの。
黒御使(ダンジュ=ノワール)のあなたなら容易でしょう?」
「私の仕事な迷子探しではありません。情報屋です。
猿は檻かなにかに入れておけば良かったのでは」
正直、エルザはこの魔術師の少女苦手だった。
彼女が一度言ったことをがんとして変えないことは、これまでの経験でよく知っていた。
「じゃあ、この町に魔術師や私のような死神は?」
「それは情報屋の仕事です。報酬は」
エルゼはそう問いかけながら手を差し出した。
エルザはふところから財布を取り出すとごそごそとあさり、
金貨を数枚、その手の平に置いた。
「これで良い?」
「30フィリング……情報は限られますよ?」
「うぅ……これ以上の出費は……。いいわ。出来る限りで教えて」
エルゼはその言葉に頷くと、どこからかぶ厚い本を取り出した。
そしてそれをペラペラとめくり、手をとめた。
「この町を行動範囲としている魔術師、死神が数名。
一人は黒髪の女で名前は____________
大まかにはこの三名ですね」
エルゼが情報を告げ終わった時、エルザの顔は真っ青になっていた。
「この報酬で伝えられる情報はこれだけです。では」
エルゼは来た時同様風の渦に包みこまれ、消滅するころにはその姿をくらましていた。
いつの間にか陽はだいぶおち、空は赤く、冷たい風が身にしみる。
「まずい……まずいわ。早いとこファトを探さないと、厄介なことになりそう……」
そういうとエルザは透明にしていた翼をもとに戻し、
真っ赤に染め上げられた大空と同化していった。