ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Requiem〜約束の鎮魂歌〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/01/03 21:15
- 名前: (( `o*架凛 ◆eLv4l0AA9E (ID: 81HzK4GC)
Tune01 二人の死神−beginning−
「暇だ……とてつもなく、暇だ……」
少年はベッドにごろりと横になって言った。
茶色の髪に茶色の瞳。至って普通の外見。
背中にある“それ”を除けば……。
「しょうがないでしょ、ファトが悪いんだから。
付き合ってあげてる私の気も察してよね。全く……せっかくの休日なのに」
ベッドの横で黙々と本を読む少女は少年、[ファトラ=フォートセバン]に言った。
二人の背中には灰色の翼。背丈や顔立ちを見ると、二人とも十五歳程だろうか。
「ずっと聞きたかったんだけどさ、何でエルザがここにいんの?」
「ファトの監視」
“エルザ”こと[エルゼリア=カーナック]は即答で返す。
そんなエルザを見てファトはむっとした表情を見せた。
「監視って、僕何も悪いことしてないけど」
「人一人怪我させたでしょうが! プルトリスの町で」
「あー、そうだっけ?」
死神は人間界に居座る以上、一つの使命をおびている。
死ぬ運命にある人間の魂を、その手でかりとることだ。
ファトはその仕事の途中、誤って他人を傷つけてしまったのだ。
「だってさ、勝手に割り込んできたんだもん。仕方ないじゃん」
「だからって、死ぬ運命にない人を傷つけちゃだめでしょ。
幸い軽傷ですんだから良かったけど……。
もしその人が命を落としていたら、堕とされてたかもしれないのよ?」
「僕、堕とされても別にいいよ。記憶ないから輪廻転生できないし」
“堕ちる”というのは、魂ごと消滅させると言うことだ。
輪廻のサイクルにまわれば再び別の命として生まれ変わることができるが、
堕ちてしまえばそれもかなわない。残るのは“無”だ。
「…………」
エルザは無言で本に視線を戻した。
「さーてと、行こっかな」
「行くって……。ファト、あなた監禁中でしょ?」
「いいのいいの!」
「良くない」
エリザが言うのもかまわずファトはベッドからおり立った。
そしてその灰色の翼をぱたぱたさせながらあくびをすると、翼をしまった。
というよりは、翼が透明になった。
「待ちなさい、ファト!」
「待てないね〜、じゃ」
ファトは扉を開け外へと飛び出していった。
エリザは深くため息をついて本を閉じると、その後を追った。