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Re: 呪術少女の奥義書-グリモワール- ( No.4 )
日時: 2010/01/04 12:13
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

3ページ目 錬金術と爆発

 別の違う教室内で、エリズのクラスが錬金術の授業を行っていた。錬金術とは卑金属を貴金属に、簡単に言えば鉛を主に金などに変える術の事だ。
 エリズは元々魔術が下手だが、錬金術は特にそうだった。毎回錬金術の授業の時は憂鬱になるエリズだったが、今回は錬金術のテスト。エリズはいつもより一層鬱な気分になっているのだった。

「“錬金”」

 順番に錬金のテストを行いその場で合否を判断するのだが、エリズの一つ前——つまり今錬金のテストをやっているのはアニェーゼだ。エリズにとってアニェーゼが傍に居る程心強い事はないが、テストなどの場合は逆だった。
 何故なら

「おお! アニェーゼが鉛を純金に変えた!」
「わあ……アニェーゼちゃん凄い!」

 周りにいた生徒がアニェーゼの結果に口々に歓声をあげる。親友の結果に、エリズは喜びながらも半分舌打ちをしていた。アニェーゼの次にテストを受けるのかと思うと、気分がどんどん鬱になっていく。
 
「流石ですね、アニェーゼ=テスタロッサ。では次はエリズ=クロイゼル、貴方の番です」

 先生に呼ばれ、エリズは小さく溜め息をつく。周りの生徒が慌てて教室の外へと逃げ出すのを見て、シルフィードは不思議そうに小首を傾げる。
 状況が理解出来ていないシルフィードに、一人の男子生徒が呼びかける。

「おい、そこの銀髪女! 危ないぞ、早く出ろ!」
『疑問、何故外に出ねばならない』
「いいから早く!」

 男子生徒の顔は酷く慌てている。シルフィードはもう一度小首を傾げると廊下へと出て行った。
 生徒全員が廊下へと避難すると、エリズはパンと手を合わせて錬金術を行う。

「“錬金”!」

 次の瞬間、鉛は大爆発を起こし粉々に吹き飛んだ。この状況を見て、シルフィードはようやく逃げなければいけない理由を納得したようだ。うむうむと頷きながら爆発した後の惨状を見る。
 煙が晴れるとぷすぷすと身体から煙をあげた少女、つまりエリズがそこに立っていた。先生は魔術か何かを使ったのかは知らないが無事なようだが、周りには文字通り粉々になった鉛が散乱していた。

「エリズ=クロイゼル」
「……はい」

 次に先生が何を告げるか、エリズには容易に予想出来る。

「錬金術のテストは不合格、今すぐ散らばった鉛を片付けなさい。——それと貴方は数日後に再テストです」
「はい」

 エリズは返事をするとこっそり舌打ちをしたが、先生に睨まれたので止めにした。掃除を始めるエリズをよそに、他の生徒達が順番に錬金術のテストを続ける。
 慣れているのかエリズは特に不機嫌そうでもない、だが機嫌が良さそうなわけでもない。そんなどっちつかずのエリズの元にシルフィードがやってくる。

『エリズ』
「……何だ、私は今——」
『要求、今すぐ我と共に来い』
「はっ、何で——」

 エリズの答えが出る前に、シルフィードがエリズの手首を掴み教室の外へ出る。エリズは訳の分からないまま、シルフィードに引きずられるように連れて行かれるのだった。