ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 呪術少女の奥義書-グリモワール-オリキャラ募集中 ( No.7 )
- 日時: 2010/01/04 15:47
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
5ページ目 四角い爆弾
『倒すと決まれば良い物がある』
シルフィードは白い服の裾をごそごそと手探りし、一つのビニール袋を取り出した。ビニール袋の中には青みがかかった灰色の小さな物体——鉛が大量に詰まっていた。
「教室から盗み出してきたのかだ……。で、鉛を使って何をしろと? まさかそれをコカトリスにぶつけるとか言うんじゃないんだろうな?」
『解答、あながち間違ってはいない。エリズ、先程の錬金術、見させてもらった。実に清々しいまでの失敗』
シルフィードの言葉の最後の部分に、エリズは少しムッとする。
だが先程の錬金術のテストを思い出してみると、鉛をどう使うのかがエリズにも分かった。
『説明、今からこの鉛を一気にあの幻獣へと投げ付ける。そしたら貴方は錬金術を発動させろ』
つまりはエリズは錬金術を使えば鉛を爆発させてしまう。それを逆手に取り、鉛で大量の爆弾を作ってしまおうという考えだ。
シルフィードはコカトリスが生徒達を襲って自分達に気づいていないのを利用し、こっそりとコカトリスの背後へとまわる。そして風を巻き起こしふんわりと浮かび上がると、ビニール袋に詰まった鉛を一斉にコカトリスに投げ付けた。
それと同時に、エリズがパンと手を合わせて錬金術を発動させる。
「“錬金”!」
エリズが叫ぶと、鉛は爆弾の如く大爆発を起こした。
『称賛、よくやったエリズ』
「上から目線で言うな精霊」
喜んだのも束の間。もくもくとした巨大な灰色の煙の中から一閃、シルフィードへと伸びる。煙から出てきたのはコカトリスの足だった。
コカトリスの悪魔のような目が石像に変えてしまおうと、前足に捕らえられたシルフィードを睨む。
「シルフィード!」
エリズは大きく叫んだ。
その心配もまた束の間。捕らえられていたシルフィードの身体が、ひゅうと音を立てて風となったのだ。
何事かとエリズがコカトリスの前足を見ると、そこにはシルフィードの姿は無い。だが次の瞬間、エリズの隣に風の渦が巻き起こる。小さな竜巻はするするとほどけていき、銀髪碧眼の少女、シルフィードが現れる。
「なっ、風……!?」
『愚問、我は四大元素の“風”を司る者なり。四大精霊はあのような幻獣にやられる程ひ弱ではない』
安心したのか、エリズは小さく笑った。
シルフィードも応えるように小さく笑うと、この状況に唖然としている生徒達に呼びかけた。
『提案、幻獣は我らで片付ける故、貴方達は今のうちに逃げるべし』
その言葉に納得したのか、残った生徒達は次々と逃げてゆく。教師であろう老女は逃げる事など出来ないと訴えたが、シルフィードが風を使って無理矢理外に放り出した為、儀式場にはエリズとシルフィード、コカトリスしか動いている者がいない。
自分達以外がいなくなると、シルフィードはエリズへと呼びかける。
『説明、貴方は何か動くタイプの魔術を使い、幻獣の注意を逸らせ。そこを我が畳み掛ける』
エリズが頷くのをみると、シルフィードは再びコカトリスの背後へと回る。背後に回ったのを確認すると、エリズは呪文を唱え始めた。
「“水よ、敵を突き刺す刃と化せ。刃よ、竜となりて宙をうねれ”」
エリズの胸のあたりで小さな球体が生まれ、水の柱となり更に巨大な竜へと形を変えていく。この魔術は昨日授業でやった“水竜”(ドラゴン=ロー)だった。
竜が言葉通り宙をうねりコカトリスへと攻撃すると、自然とコカトリスの視線が逸れて行く。その隙にシルフィードは両手に作り出した特大サイズのカマイタチを構え、コカトリスへと投げ付ける——筈だった。
「しまった! おい水竜(ドラゴン=ロー)! チィッ」
エリズの出した水竜(ドラゴン=ロー)が突然、暴走を始めたのだった