ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 呪術少女の奥義書-グリモワール-オリキャラ募集中 ( No.8 )
- 日時: 2010/01/06 15:20
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
6ページ目 “亡霊殺しの剣”(カールスナウト)
水竜は無差別に攻撃を始める。しかし儀式場は何か特別な結果が施されているのか、傷一つつかない。
軽く自身の等身ほどあったカマイタチを消し、シルフィードは問いかける。
『疑問、どういう事だエリズ。とにかく竜を抑えろ』
「んな事出来たらとっくにやってる! このままだとコカトリスに石にされる前に私達が自滅して終わりだ……!』
何とかして水竜を消そうと思ったエリズだが、そもそもどうやって魔術を消せばいいのかまったく分からない。
エリズが困り果ていた時だった。後ろの方から、何か叫び声が聞こえた。
「“灰色の暗雲より舞い降りし金色の雷光よ、我が身に降りかかる災厄を裂きたまえ”」
黄色い筋が一閃、レーザービームのように暴走する水竜を貫いた。
何事かと声のした方を振り向くと
「急に教室を抜け出して何をするかと思ったら……面倒な事になっていますね」
そこには太股の中間辺りまである金髪に翡翠の瞳、黒服を纏う魔術師、アニェーゼ=テスタロッサが立っていた。どうやら水竜を貫いたのはアニェーゼの魔術らしい。
アニェーゼがコカトリスへと近づいて行くと、すかさずコカトリスが触れれば問答無用で石に変える息を吹きかけてくる。
「息に触れれば石に変わる! 早く避けろアニェーゼ!」
あと少しでアニェーゼの身体に息が触れようとした時、一瞬にしてアニェーゼの姿が消える。幻覚かと目をこすってもう一度見るが、やはりアニェーゼはいない。
すると突如、コカトリスの頭に一本の光の刃が突き刺さる。コカトリスの頭の上には、平然とした顔のアニェーゼがいる。
「心配しなくても私は大丈夫ですよ。瞬間移動(テレポーテーション)を使えばこの程度の攻撃は普通に避けられますから」
それより、とアニェーゼが言う。
アニェーゼは指に一つの光を灯すと一つの輪を描く。更にその中に手を入れる。だが手は出てきていない。まるで光の輪から先が別空間のように。
アニェーゼが取り出したのは銀色に光る十字架を模したような剣。エリズはそれを見た瞬間、目を丸くする。
「“亡霊殺しの剣”(カールスナウト)……!? それは私の部屋にあった物だ。何故お前が」
「コカトリスを倒す為に必要かと、エリズの部屋のロックを壊して勝手に取り出してきました。これがあればコカトリスを倒すくらい容易な事」
そう言ってカールスナウトをエリズへと放り投げる。エリズは何とかギリギリでキャッチ。
亡霊殺しの剣(カールスナウト)、別名幻獣殺しとも言われる。神の力を宿す神器の一種。その力は呪われた者に更に呪われた力を宿す事で、呪われし者を打ち負かすという剣。
これを使って呪われし者——幻獣コカトリスを倒せとアニェーゼは言ってるのだ。
だが一方のエリズは黙っているばかり。
「……貴方の言いたい事は分かっています。ですが今はそんな事を言っている場合では——」
「余計な物を持ち出してきてくれたな、アニェーゼ」
刃のように鋭くアニェーゼを睨むエリズ。それに対しアニェーゼは何も言おうとしない。
『エリズ、事情はよく分からぬが呆然としている場合ではなかろう!! 貴方が倒さねばならないのだ! このままだと我等だけでなく、この学院の全員が石に変えられるのだぞ!』
そんな空気の中、背後からシルフィードの怒鳴り声が聞こえた。エリズもアニェーゼも一瞬肩を震わせてシルフィードを見る。今までのクールな印象が強かったためか、驚きを隠せない。
シルフィードの喝が届いたのか、エリズは小さく溜め息をつくと剣を構える。
「……アニェーゼ、後で肉とアイスとその他もろもろ奢るのだぞ」
「何でアイスと肉なんですか」