ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.16 )
- 日時: 2011/03/29 19:38
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)
第十四話〜始まる物語、最初の判断〜
流斗は納得した様子の蒐を見て、安心したように頷き「それでは三つ質問をします。嘘偽りなく答えてくださいね」と言い一度目を閉じる。蒐は黙って流斗を見つめ、どんな質問が来るかを考える。
「……一つ目。たとえば貴方にそっくりで貴方がいると生きられない存在がいるとする。貴方はどうしますか?」
ゆっくりと目を開き静かな声で言う流斗。蒐は少し顔をしかめ「何もしない。何をしたって必ずどちらかは消える。それに変わりはないのじゃからな」と答え、流斗を見る。
蒐の答えを聞いても流斗は表情をまったく変えずに「なるほど……二つ目、貴方が行った時で起こったことに一度だけ関与する権利が与えられたとします、さぁどうしますか?」と二つ目の質問をする。困ったような顔をして「場合による。あまりにも酷ければ関与するし、そこまで出なければ何もせぬ」と答える。
流斗は黙って頷き、メモ帳に何かを書き、声のトーンをまったく変えずに「……最後の質問です。貴方の友達、もしくは味方が危ない目に遭っています。貴方はやろうと思えば助けられる所にいます。助けますか?」と問いかける。
蒐は黙って目を見開き、困ったような顔をする。そんな蒐を黙って見つめていた黒奈はクスリと笑うが、流斗に睨まれてすぐに無表情になる。
「この答えについても場合によると答えさせてもらう。勝算があれば助けるし、なければ助けない。時の流れに身を任せる」
最後の蒐の答えを聞いてメモを取れば薄い笑みを浮かべ「……合格です」と言って杖を取り出す流斗。蒐は不思議そうに流斗の杖を見つめる。
「我、負のジャッジメント流斗なり。我が名の元に天魔 蒐にレジェンドの資格が有ると判断をし、最終決定を正のジャッジメントに求める」
流斗がそういえば黒奈は、流斗のメモを覗き込み「我、正のジャッジメント黒菜。負のジャッジメントの求めに答え、最終判断を下す。我が名の元に天魔 蒐にレジェンドの資格があると認め、証を授ける」と言う。
いつもより真面目な黒奈の口調に戸惑いながらも、そっと蒐の手に明るい茶色の石を落とす流斗。蒐が不思議そうにその石を見つめている間に流斗と、黒奈は姿を消すのだった。
そんな頃、流架は謝ろうと蒐の家までの道を走っていた。もちろんその横には紅零もいる。蒐が嘘を付くわけが無いとは思いながらも嘘はいけないと言った自分に腹が立っていた。もし嘘だとしても蒐が嫌なことを思い出してしまって言いたくないだけなのかもしれないと冷静に考えれば考えるほど、何て自分は無神経なのだろうと自分を責める流架。
蒐が嫌な過去を忘れようと必死なのは知ってるし、弱音を吐いたりしないことも知っている。それに蒐の過去については流架も色々と関係しているのである。流架は「俺馬鹿だよなぁ……あのときのこと一番理解して無いとあかんのに」と呟いて空を見上げる。
蒐が言った言葉に驚いた流架だったがそれも自分のせいなので仕方が無いと考える。それに少し嬉しかったのも事実だったりする。普段は自分の心の内を明かしてくれない蒐が流架にたいして怒りの感情を見せたのだ。確かに蹴られた所も痛いが蒐の本音の部分が聞けて流架は安心していた。
「みぃつけた……」
一度立ち止まった流架の首に冷たい刃物が当てられる。相手の顔を確かめようとしながら「何のつもりや」と言う流架。流架の首にナイフを当てているのは桜梨であった。桜梨は静かな声で「お前には用が無い……だが邪魔だから眠ってもらう」と言ってグッとナイフを流架の首に押し付ける。
流架は苦笑いを浮かべ「おいおい……殺す気満々やないか」と呟くが、首にナイフを押し当てられているため下手に動けずに居た。桜梨は口元に笑みを浮かべ「安心しろ。これから始まる物語にお前は必要不可欠だ。殺しはしない」と言う。
「でも今回用があるのは紅零やろ……紅零!! 逃げるんや」