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Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.3 )
日時: 2010/03/13 21:53
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: x8gi1/u3)

第二話〜謎のサクリファイス〜

 「お? 蒐ちゃんも同じクラスなん? 珍しいなぁ?」
 蒐に見られていることに気づいた流架は、ケラケラと笑いながら言う。不愉快だと言うような顔をして流架の前まで歩いてくる蒐を葵と來斗は不思議そうな顔で見つめる。
 「ちゃん付けするなと言っておるだろうが。それともそれも分からぬほど馬鹿なのか? まったく……お前とは同じクラスになりたくなかったというのに」
 蒐は深いため息をつき、呆れたような顔で言う。流架は「酷いなぁ。そこまで言わんでも良いやないか」と言う。蒐はその流架の言葉は無視して、葵と來斗の前に立つ。
 「我は天魔 蒐じゃ。宜しく頼むぞ」
 薄い笑みを浮かべて言う蒐。葵は静かな声で「竜宮 葵ですわ。こちらこそ宜しく」と言う。來斗の方は優しげな微笑を浮かべ「紅蓮 來斗です。宜しくお願いします」と言う。流架は小さな声で「俺のときと全然態度が違うやないか」と呟く。
 何処かから、ピンク色の髪に黒色の瞳をした妖精型サクリファイスのフーガが現れ、蒐の肩に座る。來斗は不思議そうにフーガを見て「この子が貴方のサクリファイスですか?」と問いかける。蒐は静かに頷いて「ああ。フーガじゃ」と答える。
 「にしても、蒐ちゃんが屋上行かんのって珍しいなぁ? いつもなら授業始まるぎりぎりまで、屋上にいるやろ?」
 ため息をついて「ああ、最近見つかったサクリファイスの情報収集じゃ。見た目は人間型らしいのじゃが、情報があまりにも少なくて怪しいと思ってのう」と流架の問いに答える蒐。蒐の答えを聞き流架は面白いことになったと言うように笑う。

 チャイムが鳴り響き、教室のドアが乱暴に開かれる。入ってきたのは今日一日このクラスの担当をすることになった先生と、長い黒髪に右目は眼帯で隠されていて、左目は深い青の瞳の少年、桜梨だ。首にはチョーカーをつけている。
 この学校は本当に特殊で、クラスが日によって変わるのはもちろん、更に人間型サクリファイスに限り普通に授業を受けることが出来る。妖精型、動物型は付添い人として扱われるのだが。そのため制服は普通の生徒用と、サクリファイスの生徒用の二種類あるのだ。桜梨は後者の制服を着ている。
  桜梨を見て声を上げる葵と信じられないと言うような顔をする來斗。黙って葵のほうを見たあと、つまらなそうな顔をし、無言で視線を移す桜梨。先生は「竜宮か……。どうした?」とやる気が無いような声で問いかける。
 「い、いえ……何でもありませんわ」
 葵がそういえば先生は「そうか。じゃあ、新しいこの学校の仲間を紹介するぞー」と言い、桜梨を指す。黙って黒板の前に立ち「桜梨……宜しく」と言う。
 もう少し言うことがあるだろうと苦笑いを浮かべ「桜梨はサクリファイスだが仲良くしてやってくれ」と言い、桜梨に來斗の横の空いている席に座るように指示を出す。そこで流架が勢いよく手を上げる。
 「月城か……どうした?」
 先生に聞かれれば目をキラキラさせて「質問えーやろ?」と言う。先生は困り顔で「一つだけな」と言い頷く。
 「桜梨は人間型サクリファイスなんか?」
 流架の問いに、困ったような顔をしながら「いや、違うと聞いているが何型かはまったく聞いていない。ただ、人間型に限りなく近い別の型らしいぞ」と答える先生。
 その答えを聞いて流架はニヤリと笑い「謎のサクリファイスって訳や」と呟くのだった。