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Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.4 )
日時: 2010/03/11 22:28
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: x8gi1/u3)

第三話〜リミット〜

 「謎のサクリファイスかぁ! 面白そうやなぁ。バトルしてええか?」
 何だか妙なテンションになっている流架。先生は困ったような顔で蒐に助けを求めるが、蒐は小さく両手を上げてお手上げのポーズで呆れ顔。來斗は流架を珍しい物を見るかのような目でガン見。
 「馬鹿ですか? バトルは放課後になさい。学校には勉強しに来てるんでしょ?」
 静かで透き通った声が聞こえたかと思えば、教室のドアが開き、一人の青年が入ってくる。銀色の髪に全てを見通すかのような深い青の瞳の青年、月条 桜弥(ツキジョウ サクヤ)だ。白衣にメモ帳を手に持っていてどこか知的な雰囲気を漂わせている。
 「おや。桜弥さん、どうかなさいましたか?」
 なにやら訳が分からない声を上げる流架を横目に桜弥に問いかける先生。桜弥は静かな笑みを浮かべポケットから指輪を取り出す。それを見れば桜梨が思い出したような顔をして桜弥の方に歩いてくる。
 「いえ、桜梨がリミットを忘れていたもので。連絡せずに来てしまい申し訳ありません」
 リミットと言うのはランクA以上のサクリファイスの力を抑えるためのものである。リミットの形は指輪だったり、ネックレスだったり宝石のようなものだったり決まったものは無い。だが、アクセサリーの形をしたものが多かった。
 リミットが作られたのは、三年ほど前にAランクの人間型サクリファイスの力が暴走し、大きな問題となったためである。それからAランク以上のサクリファイスはリミットをつけることを義務づけられている。
 ランクと言うのは人間型サクリファイスにつけられる戦闘能力と身体能力を総合して出されるもので、下からC、B、A、S、それにもう一つのランクがある。ちなみにそう簡単に変わるものではないのだが、念のために月に一度の検査の時に出しなおされている。

 笑みを浮かべたまま桜梨に指輪を渡す桜弥。桜梨は黙って指輪を小指にはめる。静かに頷いて桜梨の頭を撫でる桜弥。
 「さて……僕は仕事があるので帰ります。流架、真面目にやるんですよ」
 そう言って教室から出て行く桜弥。流架は桜弥に向かって何かを言っていたが、桜弥が教室を出て行く時に睨んでいったため大人しくなる。來斗は苦笑いを浮かべ、葵はクスクスと笑う。桜梨は黙って自分の席に座る。蒐は呆れ顔で窓から外を眺めるのだった。