ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.5 )
- 日時: 2010/04/13 21:57
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: Id9RRTTm)
第四話〜バトル開始〜
授業は淡々と進んでいき、気づけば本日最後の授業だ。この頃にはすっかり流架の元気はなくなって、魂が抜けかけていた。先生が当てても反応が無い。まぁ故意に無視しているのだから当たり前である。
四時限目の体育の時に流架は待ってましたとばかりに元気になって、五月蝿いくらいに声を張り上げ、蒐にスポーツ馬鹿と言われていた。四時限目とは大違いだと考えクスリと笑う來斗。
「よし、今笑った紅蓮」
先生は流架を当てることを諦め、ちょうどクスリと笑った來斗を当てる。來斗は大慌てで教科書を持ち、スラスラと読み始める。蒐は黙って窓の外を眺めている。
來斗が教科書を読み終われば、満足そうに頷いて黒板に説明をしながら文を書いていく。それを黙って、ノートに写す、流架以外の生徒たち。
横目で流架を見る桜梨。なんと言うか馬鹿にするかのように笑った後、視線を黒板に戻し、ノートに写していく。
チャイムが開放の時間を告げれば、流架が復活する。蒐はそんな流架を見て苦笑いを浮かべ、先生はため息をついて「授業中もそれだけ元気に発言してくれると良いのだが」と呆れたような顔で呟く。
連絡事項や注意を受けた後、挨拶をし帰ってゆく生徒たち。桜梨は黙って鞄の中に教科書などをしまっている。近づいてくる流架に気づき、不愉快そうな顔をする。
「なぁ、バトルしよう?」
流架はさっさと荷物を持って立ち去ろうとした桜梨の手を掴み、子供のような笑顔を浮かべて言う。桜梨は不愉快そうな顔をし、黙って自分の手を掴む流架の手を振り払い、流架の横をすり抜けていく。流架はそんな桜梨を見て子供のような笑みを不敵な笑みに変える。
「なんやぁ? 勝てる自信がないんか?」
流架の言葉を聞き、ピタリと動きを止める桜梨。そして静かに「戦うのは僕と、そちらのサクリファイス。そっちのサクリファイスが良いと言ったら、バトルしても良い」と言う。
流架が黙って紅零を見る。紅零はため息をついた後に頷き「別に……かまわない」と言う。流架は明るい笑顔で「じゃあ決まりやな」と言う。
「……ここでやるわけにはいかない。近くの空き地で待っている」
桜梨はそれだけ言い残して姿を消す。流架は妙なテンションで教室から出て行く。黙って流架についていく紅零。蒐と葵、蒐の三人は呆れたような顔をして流架の後を追う。
「天仰ぎて破滅願うなら、マテリアルそろえ、道探せ」
空き地に着けば、桜梨が宙に浮かび何かを呟いていた。不思議そうな顔をして桜梨を見つめる葵。桜梨は、流架たちに気づき、そっと流架たちの前に降り立つ。
「では、お相手願う……」
紅零が言えば、黙って頷き自分のチョーカーに手を当てる桜梨。静かな声で「戦闘用プログラム作動」と呟けば、辺りが黒く染まる。
気づけば紅零の手の上には青い光。桜梨の背中には天使のような翼。そっと眼帯をはずせばルビーのような赤い瞳が現れる。
「水龍」
紅零の手の上にあった光がうねりを上げ、水で出来た龍へと姿を変える。來斗は小さな声で「凄い……」と呟き、水龍を見つめる。水龍が襲いかかろうとしても、桜梨は表情一つ変えずに右目を手で覆うのだった。