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Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.6 )
日時: 2010/03/13 22:00
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: x8gi1/u3)

第五話〜圧倒的な差〜

 「氷魔法アイス・マジック
 不敵な笑みを浮かべたかと思えば、右目を覆っていた手を広げる桜梨。右目が燃えるように赤色から薄い水色になる。紅零は一瞬にして氷る水龍を見て驚いたように目を見開く。
 桜梨はそんな事気にせずに再び右目を手で覆い、黙って手を下げる。薄い水色から無色透明に変化する桜梨の目。一見、右目が無くなってしまった様に見えた。
 「羽刃フェザー・カッター
 桜梨の翼から抜けた羽が刃のように飛び交い、氷った水龍を粉々に砕く。目を見開く今年か出来なくなる紅零。また桜梨が右目を手で覆う。どうやら桜梨の力は右目を覆うことで変わるようだった。今度は無色透明から、美しい緑色に……。
 「圧倒的じゃな……」
 蒐はメモを取りながら小さな声で呟く。流架は蒐の言葉に素っ気なく「そうやなぁ」と返す。來兎は黙って桜梨を見つめ、葵は目をキラキラさせて、桜梨が繰り出す技を見つめる。

 「恥じることは無い……。ただ君のマスターが人を見抜く……いや、サクリファイスの力量を見抜く能力がなかった。それだけだ」
 「そんな事無い!」
 桜梨の言葉を聞き、大声で言う紅零。桜梨はそんな紅零を哀れむような目で見る。そして、静かな声で「葉刃リーフ・カッター」と言う。
 風が巻き起こり、舞いながら容赦なく紅零を襲う葉の刃。桜梨が再び右目を手で覆い、手を下に下げる。今度は美しい緑から、薄い緑に変わる。
 「竜巻トルネード
 紅零が凄い勢いで吹っ飛び、気を失えば、黒く染まっていた空き地が元に戻る。桜梨の完全勝利だった。黙って眼帯をつける桜梨。桜梨の背中から翼が消える。
 「哀れだ……無能な失敗作がマスターじゃ、いくら強いサクリファイスもただのゴミ……」
 桜梨はそれだけ言い、嘲笑うかのような笑みを浮かべた後、髪を翻し歩いていく。流架は黙って紅零に駆け寄る。蒐は黙ってメモ帳を閉じ「紅零、可笑しかったんじゃないか? 隙なら沢山あったというのに」と言う。來斗は悲しそうな顔で桜梨が歩いていった方を見つめるのだった。