ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月下の犠牲-サクリファイス- ( No.8 )
- 日時: 2010/03/13 22:25
- 名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: x8gi1/u3)
第七話 〜悪夢幕開け〜
真っ暗で怪しい雰囲気の漂う部屋。そんな部屋には、肩より少し下くらいの黒い髪に両目を包帯で隠している少年……天乃 梨兎(アマノ リト)がいた。シンプルな白いスーツに身を包んでいて、口元には不気味な笑み。
梨兎の横には、長い青髪に宝石のような緑の瞳の少女、エリカが座っている。フリルやリボンがたくさんついた可愛らしい服を着ていて、可愛らしい人形を抱きかかえている。そんなエリカが見つめるのは大きなスクリーン。
そのスクリーンには桜梨と紅零のバトルの様子が映っていた。エリカは何気なく「なんと言うかこの紅零ってサクリファイス、トリプルSだにゃ」と呟いて、伸びをする。梨兎はそれを聞いて「へーあれがねぇ……。相手が桜梨じゃよく分からないですね。エリカが言うことが本当ならば、トリプルSは後二つと言うわけだ」と言う。
トリプルSと言うのもランクの一つだ。このランクだけは特殊で、人間型だけではなく全ての型のサクリファイスにつけられる。人間型で言うSランク以上の力を持ったサクリファイスにつけられるものである。
「まぁ、エリカには関係にゃいもん」
エリカがそういえば、梨兎はケラケラと笑い「それはそうだ。人形劇のエリカには関係ないことですね」と言う。エリカはコクリと頷いて抱えていた人形に「梨兎様はよく分かってますね? アリサ」と言って笑う。梨兎はそんなエリカを見て「まだまだ子供ですね」と言う。
ノックの音が部屋に響く。薄い笑みを浮かべ、スクリーンに映っていたものを消す梨兎。静かな声で「入っていいですよ」と言えば、ドアが開き桜梨が入ってくる。
「あー。桜梨でしたか。随分派手にやってましたねぇ。まぁ良いですけど」
桜梨は黙って梨兎の座っているソファの横に立つ。梨兎は「相変わらずだねぇ」といって、桜梨の頭を撫でる。心地よさそうに目を細める桜梨と「ずるいー。エリカもー!」と言って騒ぐエリカ。梨兎は苦笑いを浮かべながらも優しくエリカの頭を撫でてやる。
「えへへ。撫でてもらっちゃったにゃ。アリサ」
語尾に音符がついても可笑しくないような明るい声。梨兎は安心したように頷いてから「さて、二人にはお仕事を頼もう」と言う。途端に真剣な顔をするエリカ。桜梨は無表情で梨兎を見つめる。
「桜梨は今もやってもらっているレジェンド探しと、君以外のトリプルSランクのサクリファイスの捕獲、エリカはジャッジメントを捕まえて消しちゃって」
黙って頷く桜梨と仕事をもらえたことが嬉しいのか「了解だにゃ。必ずご期待に答えて見せますにゃ」と明るい声で言うエリカ。梨兎は満足そうに頷き「二人とも任せたからね。エージェントのトップの二人さん」と言う。エリカは何だか妙なテンションでくるくると回っている。
クスリと不気味な笑みを浮かべ「さぁさ、導かれるといい……僕が紡ぐ悪夢へと……貴方の冷静さがなくなっているのを楽しみにしてますよ? 來斗……」と呟く梨兎。桜梨はそんな梨兎を不思議そうな顔で梨兎を見つめる。
まるでこれから起きることを暗示しているかのように空から落ちる雷。桜梨は無言で窓の外を睨みつけ、エリカは楽しそうに笑い、梨兎は、狂気に満ちた笑みを口元に浮かべるのだった。