ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼姫 ( No.14 )
- 日時: 2010/01/08 18:54
- 名前: 璃亞 ◆rhGzPkONPY (ID: 21pxq.RV)
-04
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「……ただいまぁ……」
『クタクタだ』とでも言いたそうな表情で、徹が帰って来た。
「あっ徹!お帰り!!御萩置きにいけた??」
「あー……行く途中…ってか祠の所で変な女にあってさ……、置けなかった」
大袈裟な程に肩を落とし徹が言う。
「……じゃぁ徹、御萩は如何したの??」
芹が徹の両手を眺めながら問う。
「へ??……あっあれ??無い……!?」
「えー…徹落としてきたの??勿体無ーい……
御婆ちゃんに怒られちゃうよ??」
悪戯な笑顔で芹が冗談っぽく言った。
「はぁ……ついてないな……俺」
語尾に小さなため息を漏らした。
————「その『御萩』とか言うのは……俺が食べたけど??」
急に背後から声がした。
バッと勢い良く振り返り、声の主を確認する。
声の主は、白地の着物を少し肌蹴させて着ている紅い髪に紅い瞳の自分を『鬼』と言った女だった。
「よっ小僧、さっき振りだな」
自分の手を自分の顔の位置くらいまで挙げて、暢気な口調で女は言う。
「……??徹、お知り合い??」
「祠の所で会った変な女だよ、さっき話しただろ??」
『変な女』の部分が気に障った女はムッとした表情になった。
「『変な女』とは失礼だな、小僧。俺は本物の『鬼』だ」
「え……『鬼』??……確かに、変な人だね、徹」
女は更にムッとした表情になった。
「譲ちゃん、あんまり俺を怒らせないほうが得策だぜ??
それより小僧、さっき山で落とした『御萩』とか言う黒い物体と、緑色の液体をよこせ」
「『緑色の液体』??『緑茶』の事か??って、何で俺が出さないといけないんだよ!!」
「俺は一応人間で言う『客』という物だ。客は持成す必要があるだろ??」
「なんだその理屈は!?大体お前を客だとは思って………」
————バンッ
女が床を叩いた。
「ゴチャゴチャ、五月蝿い餓鬼だな……。
良いから持って来い。言っている意味が分からないのか??」
ゾクッと背筋から冷や汗が流れるのを感じた。
「目の色が変わる」という言葉があるが、まさしくその通り。
女の見る目が変わった。その瞳には幽かながら殺気が見えた。
「……わ、分かったよ」
震える声で徹が言う。
その返事を聞くと共に女はニヤッと笑い、何時もの表情に戻った。
「分かればいいんだ、人間の出すアレは上手いからな、折角山から降りてきたんだ、
久しぶりに食べたくなってな……」
「……せ、芹に手出すなよ!!」
そう言うと、徹は家の奥へ姿を消した。
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「……………」
「……………」
庭には、芹と女の二人きり。
流れるときは沈黙。
「………チラッ」
何か言いたいのかさっきから芹が女のほうをチラチラを見ている。
「……何か言いたい事でもあるのか??安心しろ、徹とは何も無い。俺の好みの男でも無いしな。」
沈黙を破ったのは女の方。
「………え??」
言いたかった事を見事に言われてしまったので一瞬芹は驚いたようだが、
安心したのか少し表情が和らげになった。
「………ジー…」
今度は女が芹を見ている。
「……あの、……何か??」
視線に気がついたのか芹が困った表情で女に問う。
「いや、別にな」
そう言うとそっぽを向いた。
しかし、目だけは芹の方を向いたままだった。
(この小娘、あの小僧と同じ匂いがするな……まさか、コイツが……??)
「……ちょっと上がらせてもらうぞ」
「え????」
返事を聞かないで女は部屋へ入った。
それと同じく芹の足を踏まないようにしながら布団に腰を下ろした。
日が落ちて、空が赤く染まりつつある。
「サァサァ」と風の靡く音がする。
風に乗って、女の紅い髪も踊る。
————「あっ……」