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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼姫 ( No.18 )
- 日時: 2010/01/08 21:20
- 名前: 璃亞 ◆rhGzPkONPY (ID: 21pxq.RV)
-05
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————「あっ……」
芹の口から小さな声が漏れる。
++++
彼女は見てしまった。
紅い女の揺れる髪の中輝く「ソレ」を……————
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「…………お、に……??」
紅い女の揺れる髪。
その中に陽の光を受け、輝くモノ。
人の肌の色と言うには薄すぎ、
黄色と言うには少し灰色過ぎる「ソレ」。
人間には絶対に無いモノ————『角』
「………怖いか??」
小さき少女の震える口から零れた言葉聞こえたのか、紅い女……鬼は問う。
鬼の問いに芹は首を横に振った。
鬼は「フッ」と乾いた小さく笑ったと思えば、芹に対して馬乗りになり、頬に手を当てた。
「……目が恐れておるぞ」
「………ッ!!」
手を滑らせ、指が顎までいくと、手を離し、鬼は抱きしめた。
芹の声にならない叫びが……耳に響いた。
「安心しろ、鬼とはそういう生き物……、恐れられる生き物……。」
「……………。」
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「おいっ!!!」
どれだけの時間が過ぎたのか、やっと徹が茶と御萩を持って戻ってきた。
「芹から離れろ!!」
抱きついたまま鬼が徹を眺め、
「…………」
無言で芹から離れた。
庭へ出ると、空に紅く輝く夕日を見、こちらを顔だけ向けた。
「おい、女名前を何て言う??」
「え……芹……です」
それだけを聞くとまた、夕日の方へ向き直した。
「『芹』……か……そうか…」
鬼は『芹』という名を繰り返し言う。
「俺の名は……『キラ』」
何故自分の名を言ったのか、それは鬼本人しか知らない。
途端に鬼の手が赤く燃えた。
「おい、小僧。また祠へ来い。待ってるぞ」
それだけ言うと鬼は業火に飲まれ、消えた。
++++
鬼は祠へ戻った。
「長ッ!!お帰りなさいませ!!」
下々の者は鬼にひれ付する。
++
サァサァと風のだけが響く。
(『芹』……)
その名が頭から離れない。
*二章終わり*
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