ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鬼姫 ( No.5 )
日時: 2010/01/08 18:57
名前: 璃亞 ◆rhGzPkONPY (ID: 21pxq.RV)

-02
***

何分歩いただろう…、足はもつれ疲れてきた……。
なんで…あの時「行く」と言ってしまったんだろう……。

「なぁ……やっぱり戻ろうぜ??疲れた。」
ヘトヘト声で徹がたか達に話しかける。

「なぁ〜に言ってるんだよっ徹!っお見えて来た!!」

暗く、ジメジメした木の間に大きな光の塊が漏れた。
その光の方へ進むと、祠があった。

お世辞にも立派と言えるほど大層なものではないが、
見た目はガッチリとしていて頑丈そうな祠。
此処に鬼が祀られているらしい。

「おぉおおぉお〜!!!うめぇ!!!」
祠を見つめていた徹はハッと我に返った。
たか達が美味しそうに供えてあった饅頭を食べている。
「ほらっ!!徹も食えよ!!」
たかが目の前に饅頭を突き出す。

白く…薄い生地の饅頭は、中の餡子が透けて微妙に黒くなっている。

(……おいしそう)
徹はゴクンと唾を飲み込み、饅頭を受け取り頬張った。

人間とは理性に弱い生物。
空腹になれば、目の前にある食物さえも自分のものでなくても食べてしまう。

*

「は〜〜〜〜〜、美味かった!!!」

数分後、供えてあった饅頭を全て平らげ、たか達が言う。
「んじゃ、そろそろ村に戻るか…あんまり遅くなると心配されるしな…。」
その声と共に全員、山を降りることにした。

(……帰ったら芹の面倒でも見てやるか…)
きまぐれに徹は心の内にそう思った。

++++
彼女は見ていた。
彼女たちの一族特有の赤い瞳で。

「まったく、最近の子供に親はどんな躾を施してるんでしょうね……?」
「まぁ、いいじゃないか、俺達は『あんなモノ』は食べないんだから」
生真面目な青年に対して、彼女は軽く言った。

「それよりも……あの子供……」
「??どうかしました??」
「うん??ちょっと「ヒトの子」とは違う匂いをした子が居たような気がしてね……」

彼女は肌蹴た白地の着物を着なおしながら『ニヤリ』と笑った。

———サァ……祟リノ時間ガ近ヅイテクル