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Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.2 )
日時: 2010/01/07 20:05
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

第一章 堕天使は静かに忍び寄る

交差点01 

「いやあ、やっぱ冬は寒いわ」

 12月25日、高校一年生神崎辰巳の冬休み初日。コンビニ帰りの神埼はビニール袋片手に、手袋を着けた手に息を吹きかける。白い息は、より一層寒い冬を感じさせる。
 辺りには雪が隙間なく積もり、町は白銀の世界と化している。小さな子供達ははしゃぎ回っているが、彼女いない歴16年の神埼は雪が積もったところではしゃぐ気など少しも起きない。
 一人暮らしの神埼は、わざわざ料理を作ってくれる人など一人も居ない。別に神埼は料理を作れないわけではないが、この寒い中キッチンに立つのも面倒臭いのでコンビニで適当に食べ物を買う事にしたのだ。

「あー……ったく。ホワイトクリスマスだ何だでバカップル共が騒ぎやがってうぜえ。まあ神埼さんは一人でも平気だけどな……」

 独り言を呟きながら神崎は家のドアを開ける。
 リビングに入り、四角いテーブルに食料の入ったビニール袋を放り投げる。暖房を点けようとリモコンを探す。が、どこにリモコンを置いたか忘れてしまった。

「やべえ、リモコンどこに置いたか忘れちまった。まあいいや、とりあえず他に何か食い物あったかな」

 マフラーや手袋もリビングのソファに放り投げて、キッチンに入る。
 瞬間、神崎の目に衝撃の光景が飛び込んできた。
 ……見知らぬ栗色髪の幼女が、冷蔵庫を開けて食料を食い漁っていた。

「む、ぬしはこの家の主か。悪いが暫く匿ってくれぬか」
「……は?」

 謎だ、意味不明だ。何故に幼女が自分の家の食料を食い漁っているのか。
 しかも幼女の服装、どう見ても着物だ。しかも太股の中間辺りで着物の裾が裂けている。栗色髪は頭の上でお団子にしてあり、簪(かんざし)を身に着けている。
 当然のように人の食料を食べる幼女の口が、もう一度開かれる。

「悪いが匿ってくれぬか」
「……えっと?」

 「匿ってくれぬか」という言葉からして、誰かに追われているのか。神崎は頭に手を当て考える。
 でもこんな和風幼女、一体誰が狙うのだろうか?
 とりあえず神埼は何故忍び込まれているのか事情を聞く為、お人形のような可愛らしい顔をした少女を掴み、マフラーなどが放り出されたリビングへとずるずると引きずっていった。
 訳の分からないという顔の幼女を見て、神崎は思う。
 ……こっちが訳分からねえよ。