ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 第四章開始! ( No.100 )
- 日時: 2010/08/01 14:34
- 名前: 白魔女 (ID: /tvFj6K5)
二話——白猫・グレイ
朝の日差しがほんのりと差し込む寝室で、アリスは目を覚ました。
いつもはアリスの布団の上で元気に飛び回っているルリは、今朝は布団の中でおとなしく寝ていた。珍しいなと思いながらも、アリスはさっさと洗面所に向かった。
久々の、静かな朝だった。
季節は夏。森の木々は青々と茂り、動物達も生き生きとしていた。店の前にある花壇に水をやり、目の前を通り過ぎるウサギの親子を見かけ、アリスはクスッと笑った。
そんな事で笑う自分に、アリスは驚いた。昔は滅多な事では笑わなかったというのに。
——そう、昔、あの事があって——から——……。
「……っ!」
アリスは頭を抑えてうずくまった。棍棒で頭を殴られたような痛みが走ったのだ。そして何とか立ち上がり、アリスはイスに腰掛けた。
——いけない、思い出してはいけない——。
頭の中から、自分の声がした。そう、そのとおりなのだ。忘れろ、忘れるのよアリス……。
その時だ。店のドアを叩く音がした。
「こんな朝早くから……お客?」
頭痛は段々と治まってゆき、アリスはドアの取っ手に手をかけた。が、ドアは凄い勢いで独りでに開いた。
「よぅ! アリスっ!」
そこにはさわやかな笑みを携えた金髪の男が立っていた。白いタキシードを着込んだ男はまさに“美形”の顔をしていた。白い歯を輝かせ、男はアリスの肩に手をかけようと手を伸ば——そうとした。店の中から飛び出してきた黒い影に押し倒されたのだ。
「いたた……ご挨拶だな。クロス」
「おっとぉ、悪い悪い。朝っぱらから気色悪い声がしたもんだから、つい、体が勝手にな……?」
にらみ合う二人を見て、アリスはため息をついた。
そしていつの間にか白い猫に姿を変えた男と、その白猫を引っかこうとしている黒猫をひっ捕まえて、店の中に放り込んだのだった。