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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 第四章開始! ( No.110 )
日時: 2010/08/04 22:35
名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)



「あぁ……たぶん、紅い魔女だ」


“紅い魔女”。


 その言葉だけが妙に不思議なオーラを出していた。まるで、その言葉だけで呪文になっているように。


“紅い魔女”


 その言葉は、となりの部屋で寝ていたルリの耳にも入った——。

「アリス!」

 そこにいた誰もが飛び上がった。となりの部屋のドアが開き、寝巻き姿のままのルリが飛び出してきたのだ。

「アリス、紅い、魔女って……」

 わっと、ルリはその場で泣き出してしまった。慌てて駆け寄るアリス。

「アリス……この子は一体……」

 途中まで言いかけて、グレイは口をつぐんだ。紅い瞳が目に入ったのだ。状況を掴んだグレイは、黙ったうつむく。


「ねえ——紅い魔女って——紅い——魔女って? ——アリス、どっ——どっかに、行っちゃうの?」

 言葉をつむぐたびに紅く瞬く瞳。アリスは困ったようにおろおろしたが、その時、アリスの横に人影が現れた。それは、一番、この場にいてほしい人物。

「ほら、ルリちゃん、大丈夫だよ。大丈夫だから、安心しておやすみ……」

 瞬間移動で現れたのは、他ならぬソラだった。ルリに魔法をかける。そして眠ってしまったルリを抱き上げ、アリスに向き直った。


「話は聞いたよ、アリス。盗み聞きじゃないんだけど、入りずらかったから、ドアの前で話を聞いてたの。

 行きなよ。あの魔女のいい情報が掴めるかもしれないよ。ルリちゃんは、私に任して。ほら、私こういうの、得意だから」

 明るく笑うソラに、アリスはすまなさそうに顔を歪めた。

「ごめん、ソラ。ソラにはいつもこんな事ばっかり……」

「なぁに、気にしてないって」

「話は終わったか? ならすぐにでも出発するとしようぜ」

 グレイがすくっと立ち上がる。

「う、うん……」

 未だにルリを心配しているアリスに、ソラが笑いかけた。

「心配ないって。なんたって私がついてるんだから」

「そ、そうね……ありがとう、じゃあ、行くよ」

 そうして、三人は小屋を後にした。それを見送ったソラは、ルリをベッドに運びに行った。