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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 第四章開始! ( No.111 )
日時: 2010/08/07 22:44
名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)



四話——列車の中


 列車の中から見る外の世界は、色鮮やかで誰もが目を奪うものだった。夏という季節もあり、緑は青々と茂り、湖は太陽の光を反射してキラキラと星空のように光っていた。

 しかし、そんな美しい景色など、アリスの目には色あせてしか映らなかった。

 ——ルリが、あんなにも紅い魔女に怯えていたなんて知らなかった。言葉を聞いただけで、あんなにも動揺するなんて——私は何も、気づいてあげれなかったんだ。勢いでルリを預かってしまったが、こんな頼りない私のそばにいるより、ソラや、他の魔女と一緒の方が、ルリは安全なのかもしれない。こんな、私なんかより——。


「アリス、しっかりしろ。顔色が悪いぞ?」

 正面に座っていたクロスが、心配そうに顔を覗き込む。心配そうに揺らめく黒いしっぽが、アリスの視界に入った。

「もう少しで、アールシュタインに着く。元気を出せ」

「うん…ありがとう」


 あの場でもし、ソラが来なかったら私は家から離れられなかっただろう。ルリのそばにいなくてはと、グレイの誘いも断っただろう。もし、もう少しでも長く、あの場所にいたなら、私は——。

 しかし、それではダメなのだ。紅い魔女の秘密を解いてこの瞳の呪いを解かなくてはいけないのだ。私のためにも、ルリのためにも……。


「そら、もう見えてきたぞ」

 グレイの言葉に顔をあげ、窓の外を指す彼の指先を、アリスは見つめた。そして、指の指すほうへ。

 海、木、橋——順番に目で追って、そして最後に目に飛び込んできたのは、赤い屋根がずらりと並ぶキレイな町並みだった。丘に町ができているので、一個一個の家がよく見える。中心部には、大きな時計台があった。


「スゴい……」

 思わず歓喜の声を上げたアリスに、グレイは得意そうに言った。



「ここが、アールシュタインだ」