ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.30 )
日時: 2010/01/28 20:15
名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)

三話——いざ、サバトへ


「すっごーい!やっぱり、アリス、空飛べたんだね!」

「お願いだから、箒の上ではしゃがないで……」

 アリスはルリと、クロスを乗せた箒を水平に保ちながら飛んでいた。時刻は11時。人間達は大体寝静まっている時間帯だ。そんな冷たい夜風の中、ルリはずっとはしゃぎまわっていた。

 箒は、クロスが一番先に乗っていて、次にルリがアリスの膝に乗るように座っているが、ルリがピョンピョン飛ぶたびに、箒がガクッと揺れる。

「うぅ……重い……この状態保つの、結構魔力が……わっ!」

「サーバートっ!」

 ルリがまた飛び跳ねたおかげで、箒が揺れる。

「見えたぞ、小娘。あそこだ」

 クロスが静かに言った。

「え?どこどこどこ?あ、あそこね!」

 ルリが指したのは、森の奥にある原っぱだった。が、そこだけオレンジ色に輝いていて、騒がしい。

「おい、アリス。見えるか?あそこだ。そろそろ下りよう」

 クロスがアリスに催促するが、アリスは苦しそうに呻いた。

「うぅ……もう、だめ……魔力が残ってない……」

「……!?アリス!?」

 そして箒は急降下、と言うか、落ちた。

「キャーっ!」

「ニャーっ!」

「うわーっ!」

 ドタッドタドタッと、クロス、ルリ、アリスの順に山積みになり、三人はサバトの会場の地面に叩きつけたれた。

「いったぁぁ〜」

 アリスもルリも、ムクッと起き上がるが、一番下だったクロスは依然、大の字で転がっていた。

「うわぁ!ここがサバト!?」

 クロスの事は全く気にせず、ルリがはしゃぐ。

 そこは、まさにパーティ会場のようだった。

 木にはランプが引っかかり、会場を照らしているし、テーブルにはおいしそうな七面鳥が並んでいる。空中にロウソクが浮いていると思えば、大きなシャンデリアだって浮いている。そんな明るく照らされた会場では、魔女がたくさん集まって、ワイングラスを片手におしゃべりをしていた。でも、やはり魔女の集会なので、骸骨が飾ってあったり、テーブルクロスには血のようなあとがわざとらしくついている。

「すっごーいっ!」

 ルリはそんな光景を、目をランラン輝かせて見つめていた。

「魔女がたくさんいる!あれ、でも男の人もいるよ?あの人も魔女?」

 アリスはクスッと笑ってから答えた。

「いや、女の人は全員魔女だが、男の人は、悪魔だよ」

「悪魔?」

「うん。ほら、クロスのように」

 アリスが後ろを指し、つられてルリもクロスがいたところを見るが、黒猫の姿はどこにもいない。

「あれ……?クロスは?」

「ここにいるだとろ……」

 クロスは不機嫌そうに言ったが、ルリはまだ理解してない。

「え!?あ、この人クロス!?」

 ルリはようやく気づいたようで、そこに立っていたクロスを指差した。クロスは黒いコートを着た、アリスと同じくらいの年の少年になっていた。

「そうだよ、ルリ。そいつが本当のクロスの姿」

 クロスは照れ臭そうに頬をボリボリとかいた。

 元の黒猫の面影と言ったら、その黒いコートと、黒髪から飛び出ている猫の耳だ。

「可愛いーっ!猫耳っ!」

(そこかよ……)

 アリスとクロスは二人同時に心の中で突っ込んだ。

「あーっ、久々にこの姿になったから、まだ慣れてないや」

 大きく伸びをするクロスに、アリスは言う。

「じゃあ、そこのテーブルんとこ行ったら?お仲間に久々に会いたいでしょ」

「そーさせていただくよ」

 クロスが悪魔達が集まっているテーブルに行って、楽しそうに話すのを見届けると、アリスはルリの手首を掴んだ。

「さーて。あたし等も、会場を一回りしようか」

「うん!」