ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.31 )
- 日時: 2010/01/28 19:57
- 名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)
四話——愉快な魔女達
歩き始めてまだ少しの時、アリスは呼び止められた。
「あ!アリスっ!?」
「ん?あぁ、セレサ!」
アリスが振り返ると、イチゴのショートケーキを食べていたセレサが、ニコニコしながら立っていた。ピンクのフリフリのワンピースを見事なまでに着こなしている。
「どうしてたのよ、今まで、みんな心配してたのよ〜?」
「あはは。ごめんごめん。色々あって……って言ったら嘘になるけど、来るのがめんどくさくてね」
照れ臭そうに、アリスは笑った。
「んもう。いいけどぉ。それより、その子は?紅い……」
ルリがキョトンとする。
「まあまあ、セレサ。それよりさっ……」
アリスはほぼ強引にセレサのセリフをとめた。奥へ連れ込み、ルリに聞こえないよう小声でセレサに言う。
「あとで説明するから……みんなが着たらね」
「みんな?ああ、わかったわよぅ」
そうこう話しているうちに、アリスを含めて三人目の魔女と、四人目の魔女がきた。
「アリスじゃないの。一体今までどうしてたのよ!」
現れてすぐ怒鳴り散らすのはリンだ。赤いチャイナ服がかなり目立つ。
「ちょっと、リンったら。久々にあったんだから、もうちょっと他の言葉かけてあげなよ」
後ろではソラが、リンをなだめていた。一番魔女らしい服を着ているのは、ソラではないだろうか。
「リンとソラか。懐かしいな」
「懐かしいなじゃないわよっ!あんたがいつもサバト来ないから……」
アリスがぼやくと、すぐにリンが噛み付いたが、アリスのそばで立っているルリを見て、言葉を切らす。
「アリス。この子って——」
ソラがアリスに言い掛けたが、すぐさまアリスが切った。
「説明はあとで。あとの二人はどうしたの」
「え?セシルとメイサならぁ、あそこで……」
セレサが後ろを指差すと、今まで気づかなかったが、人だかりが出来ていた。
「まーた、あの二人はやってんのかね。呆れた」
リンがため息をつく。アリスがその場で駆け寄ってみると、セシルとメイサが喧嘩をしていた。まぁ、喧嘩なんて小さなものではないが。
「メイサ!またあたしのワイン盗んだだろう!」
「盗んだ……?違うね……毒を入れようと借りてただけ……」
フードを目の辺りまで下げたメイサが、クスッと笑うのを見ると、セシルがさらに剣を振り回す。
「貴様ぁっ!」
セシルが剣を振り下ろす。見事にテーブルが真っ二つに割れるが、メイサはひょいっと避けてしまう。
「今度こそっ!」
とセシルがまた剣を振り回すが、ねらいのメイサには全く当たらず、まわりの関係ない魔女や悪魔に当たる。
「まだ、仲悪かったんだ……」
ため息交じりでアリスがぼやく。隣ではソラが、
「だって、“光”と“闇”だもん。どうやっても仲良くなんかならないさ」
と言った。セシルは光の魔法剣士。メイサは闇の呪術士なのだ。
「この前だって、セシルは辛党だから、料理を激辛にしたら、メイサがそれを食べちゃって……メイサは甘党だからね。それで、メイサが呪いをかけようとしたら、セシルにバレて、そりゃもう大変で……」
「私は結構、仲良いと思うけどなーっ?」
ソラの言葉を遮ったのはセレラだ。その考えにも一理ある……かもしれない。
「けど、サバトで暴れられるのは、困ったものよね?」
リンが言うと、アリスが仕方ない、という風に言った。
「あたしが止めてくるよ」
アリスが前に出るのを見て、みんなが慌てふためく。
「ちょっ、ちょっとぉ、危ないわよ!」
「戻ってきなよ!アリス」
無視してアリスはセシルとメイサの真ん中に立った。
セシルは構わず剣を振り下ろし、メイサは紫色の短刀を構えている。
「アリス——っ!!」
ルリが、そしてみんながアリスは木っ端微塵になる、と思ったが、アリスは無事だった。二人が持っていた武器は、アリスの手の中にある。
「あ、お前アリスか!」
剣を返してもらったセシルは、さっきの鬼のような形相はどこへやら、アリスの肩をポンっと叩いた。
「心配していたんだぞ。無事で何よりだ」
お前が言うセリフかよ……なんて思いつつ、アリスは笑みを返した。周りはホっと、胸をなでおろす。
「メイサは——」
アリスが振り返るが、メイサの姿は、アリスが持っていたはずの短刀とともに消えていた。いつもの事だ、とアリスはセシルのほうを向き直る。
「わぁーん、アリス、死ぬかと思ったぁ〜」
一番最初にアリスに駆け寄ったのは、魔女の誰でもなく、ルリだった。
「ん?アリス、子供が出来たのか?」
「んなわけねぇだろっ!」
セシルの見事なボケっぷりに、きっちりとアリスは突っ込みを入れる。
「子供ではないとして——その子の瞳は……」
「今から説明するから」
きっぱりと、アリスは言った。